2022年10月29日
トリーター:小森

ウミガメの赤ちゃん近況報告

もうご存知の方がほとんどかと思いますが、8月にアカウミガメの赤ちゃんが産まれたんですぅぅぅ!
たかがカメでしょ、とか思った方います??
これ、どれだけすごいことかわかります??
このなが~い“えのすい”の歴史の中で、アカウミガメの繁殖はなんと初めてなんです! ぱちぱち!

過去の繁殖に向けた資料を見るといかに大変で苦労しながら試行錯誤してきたのかがよくわかります。
私は今年異動してきたため、最後の肝心なところだけをいいとこ取りする、完全に一番美味しいポジションです。

無事に誕生するまでの期間はとっても大変で、夏場の記憶がほぼありません。笑
焼けるような日差しの中おこなう、安全確保のための卵の移設、そしていつ産まれてくるのか、産まれた子どもの見落としはないか、無事に海に旅立ったか。
それがなんともタイミング悪く、コロナ感染者が大急増して職員もバッタバッタと倒れていく中でおこなわれていきました。
ほんとにしんどかった~。
なので、そんな中無事に産まれてくれた子ガメはとってもかわいいです。

↑移設のようす。予想外の暑さでタオルを頭に巻いています。↑移設のようす。予想外の暑さでタオルを頭に巻いています。

しかもですよ? 定説では一度繁殖期を迎えると次繁殖できるのは 3、 4年後といわれています。なので、来年見よーって思っても見られないんです!! 今だけです!!

8月4日に産まれた子ガメは現在すくすく成長中。産まれた時に比べると肉厚になり活発にもなってきました。
そして、知っていましたか? ウミガメって産まれたときは潜ることができないんです。
それがなんと! 3か月近く経った今、やっと水槽の下にタッチするくらいまで潜れるようになったんです!
それでもまだまだ泳ぎがぎこちなくてすぐに浮いてきてしまいます。そんな頑張っている姿がこれまたかーわいいー。
みなさんにも少しおすそ分けです。

こちらがまだしっかりと潜ることのできない 9月2日の子ガメ↓


そしてこちらが下まで潜れるようになった 10月20日の子ガメ↓


自然界では外洋に出ると敵(捕食者)でいっぱいなので、日中は基本じっとしています。それはもう、海を漂うゴミや枯れ葉のように・・・。動かなければ敵に狙われませんからね。
その忍法枯葉の術がこちら。

前肢をうま~く甲羅にピタッと乗せてフリーズしています。撮影者(私)が近づいてきたので必死に隠れていますね。かーわいいー。

この姿が見られるのも赤ちゃんのうちの今だけです! 今でもたまーにこのように擬態しているので、タイミングが良ければみなさんもこの忍法枯葉の術が見られますよ!

最後に、放流のようすをほんの少しご紹介。
放流直前までは「フレンジー」という外洋に出るために必要不可欠な興奮状態を発動させないよう慎重に対処し、いざ放流のときにはこのようにライトで道しるべを作ります。


ウミガメの赤ちゃんは月の光を目印にして海へ向かうため、本来であればこのようなライトの道しるべは邪魔になってしまうため要りません。ですが、海の家や観光客の出す光、車や街頭の光など、街中はどうしても赤ちゃんを誘惑する光がたくさんあり、どうしても海から遠ざかってしまいがちになるため、無事に旅立てるよう海はこっちだよーという誘導をおこないました。
「生」を力強く感じた瞬間でした。無事に育ってまた戻っておいでね。
(メスの場合、産卵するときには産まれた浜辺に戻ってくる習性があります)

昔の資料を見ていると、現在は明らかにこの相模湾でのアカウミガメの産卵報告が減っているので、私たち人間が環境を壊す一方で微力ながらでも私たち人間が自然回復のお手伝いをできればと思います。
とにかく今だけづくしのウミガメ、見るなら本当に今のうち! ぜひお越しください!

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