1月16日から2月3日まで、ペンギンプールをクローズして、ペンギンプールの水底塗装とガラスの研磨作業をおこないました。その間、22羽のペンギンは、隣のアザラシのプールを仕切って居候させていただき、残り 10羽はバックヤードの鰭足類で使用する部屋に間借りさせてもらっていました。
ガラスの研磨は10年来の願望で、多くの方のご協力でようやく着手できました。“えのすい”に限らず、どの水族館や温泉施設などでも、ガラスに残る、水道水に含まれる炭酸カルシウムやケイ素、塩素や不純物が水滴状のまま乾燥して俗にいう「ウロコ状」になる状態、これが積み重なって白くなりガラスのクオリティをさげてしまうことは永遠の課題でもあります。
今までも自前で研磨してきたのですが、追っつかなくなっていました。“えのすい”のInstagram(インスタグラム)でこのことは上げていただいているので、ぜひ今までペンギンプールを見たことのある方に改めて見ていただきたいです。
ちなみにきれいになったがゆえに、水面の白い部分がより気になる方もいらっしゃると思います。これは「ウロコ状」現象ではなく、清掃時やペンギンがつけた傷です。ここは次の課題となっていますので、その上あたりをよく見てみてくださいね。
さて、今回のトリーター日誌ではプールの底の色についてのお話です。
プールの底は防水加工してありますが、長く使用していると割れてきてしまったり、その割れをペンギンたちがくちばしを使って剥がしたりしてしまいます。
今回はプール底全面の改修、塗装をおこないました。
アザラシプールに比べてプール底は濃い色になっています。今回も同じ色にしました。旧江の島水族館のペンギンプールは白っぽい空色でした。ペンギンプールに限らずですが、プール底の色は生物の生息深度で濃い青から薄い青まで合わせることが多いようですが、新江ノ島水族館になってからは、このプールの色にしています。
この濃い青色のプールでは旧江の島水族館では見られなかった行動が見られるのです。
この行動をするのは、産卵前の雌ペンギンです。
産卵少し前になると通常より水底をいつもより長く遊泳するのです。他の施設の方に聞いてもあまり「ああ、やるやる」みたいなことは聞きません。いつもより体が重くなって潜りやすいのかなあ?なんて思ったりしたこともあるのですが、この行動にもう一つ行動が加わります。水底の物をついばむ行動です。それも頻度としては白いところに執着していることが多いようです。
水底にある白いものとしてはペンギンたちの尿が一番目立っています。
この白い尿の痕跡をプール底でつついていたり、塗装がはがれて下地の白っぽい部分をついばんでいたりする行動が見られています。
野生で同じようなシチュエーションを考えると、海底の白いものをついばむ可能性としては貝殻、石、生物の骨、サンゴの残骸などがあるかなと思います。これらをついばむことで卵殻の形成に役立ったりするのではないかなどと仮説を立てたりしています。
産卵前の野生の雌ペンギンが海の底で何かやっているか、ということについて書かれた文献は見たことがありません。他の施設でも同様な行動は聞きません。
プール底の色と白いものの関係が他の施設より顕著なのかもしれません。
当館では多くの雌ペンギンたちが産卵少し前におこなう傾向があるので、水底がきれいになったこの後もその行動をおこなうのか、観察を続けてみたいと思います。
もし野生の雌ペンギンのそんな行動観察を記録された方がいたらぜひ拝見させていただきたいです。
私たちは生物たちの生息環境を再現しつつも、お客さまが見やすいように飼育環境を作りこみますが、飼育下でもまだまだ、分かっていない生態、行動があります。
これは環境や飼育方法で見出すことができると思います。
ガラスと水底がきれいになったペンギンプールでもっとペンギン観察をしてみてください。