2023年02月24日
トリーター:矢作

医療チームの一日

2名の獣医師と私が所属している“えのすい”の医療チーム。
普段どんなことをしているか、なかなかみなさんにお伝えする機会がないので、今回はとある一日の出来事をご紹介します。

“えのすい”では無脊椎・魚類・爬虫類・鳥類・哺乳類を約 600種、約 27,000点( 2023年 1月末)展示しています。
生き物たちの異変にいつ何時も対応できるよう、チームの 1名以上は毎日常駐しています。主に、病気の治療、予防・早期発見を目的とした定期検査、個体のカルテ管理、薬品管理、データ収集・整理などさまざまな業務にあたっています。

<ある一日のスケジュール>
・7:30 ハナゴンドウ『ビーナ』 検温・採血・内視鏡(胃液採取)・採便・超音波検査
・8:30 カマイルカ『クロス』 検温・補液・採血・採便
    バンドウイルカ『ミレニー』 検温・採血・採便・採尿
    バンドウイルカ『サワ』 検温・補液・採血・採便・採尿・胃液採取
・9:00 ウミガメ『エル』、『レッド』 採血・超音波検査
    ウミガメ『クロ』、『ルル』、『ウチワ』、『2022-No.7』、『2022-No.9』 採血
・10:30 フンボルトペンギン『テン』、『ナイス』、『ソラ』、『ユキ』、『サチ』 内視鏡
・12:00 昼食
・13:00 各検査の続き、データまとめ、カルテ入力など

上記のような検査の多くは、開館前や閉館後、またバックヤードで実施しているためお客さまの目に入ることは多くないと思いますが、検査の練習や日中でも可能な検査は開館中でも実施することがあります。

この日は、検査内容が普段よりも多く、同時進行で進める必要があったので私たちも検査を分担し、各生き物たちの担当者とともに協力して進めていきました。

以下に抜粋してご紹介します。

〇ウミガメのヘマトクリット値測定

採血後、ヘパリンNa入り採血管に分注した血液を使い、ヘマトクリット管を用いてヘマトクリット値(血液中に赤血球が占める割合)を測定します。

〇鯨類の胃液評価

胃液採取後、胃液の色や性状を評価し、pHを測定します。

遠心分離後、沈査を細胞診および培地に塗り、細菌・真菌培養を実施します。

〇ペンギン内視鏡

フンボルトペンギン『ユキ』の胃内からは、餌の魚の水晶体(眼)と羽が数本見つかりました。大きな羽は鉗子を使って回収しましたが、その他に大きな異常は見つかりませんでした。

こうしたさまざまな検査を定期的におこなうことは、病気の予防や早期発見につながります。

水族館の生き物たちの検査については、当館の白形獣医が鶴見大学の植草先生、沖縄美ら海水族館の植田先生とともに執筆した『海獣診療マニュアル 上・下巻』にて詳細を記載しています。みなさんもぜひチェックしてみてくださいね!!!

“えのすい”のメインショップおよび学窓社のHPより購入いただけます。
海獣診療マニュアル 上巻/鯨類の診療編
海獣診療マニュアル 下巻/鰭脚類・海牛類の診療編

<追記>
2023年5月より、新江ノ島水族館オンラインショップでの取り扱いを開始しました。
海獣診療マニュアル 上巻/鯨類の診療編
海獣診療マニュアル 下巻/鰭脚類・海牛類の診療編



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