2023年06月09日
トリーター:山本

第10回 国際ヒドロ虫学会 in ノルウェー 番外編

国際ヒドロ虫学会 in ノルウェー! 続きです。

今回、現地のクラゲの話を書こうと思ったのですが、その前に…! せっかく異国の地に来たのだから、現地にどんな魚がいるのか気になってしまうのが水族館飼育員。どんな魚… え? どんな魚?? まったく想像もつきません。ノルウェーといえば... サーモン??

ということで、泊まっていた近くの漁港や大学の実習所で、クラゲを採集する片手間に簡単な釣り調査もしてみました。仕掛けは普段趣味で愛用している竿とリール、0.8 ~ 1.2gのジグヘッドに、いろいろなワームをつけて挑みます。
その結果、1週間のうちに釣れたのは… タラの仲間が 2種類+ ベラの仲間が 4種類の計 6種類でした! どれも魅力的だったので、ご紹介していきます。

まずはタラ科(Gadidae)の仲間。

英名:Pollack
学名:Pollachius pollachius
「 Pollack (ポラック) 」と呼ばれ、この辺りではとても有名な魚のようです。漁港でも大学の実習場でも、一番釣れたのはこの魚でした。かなり反応が良く、投げる場所やタイミングが良ければワームにすぐ突っ込んできます。多分ベルゲン周辺の岸壁はこの魚だらけです。スプーンやミノーでも釣れ、現地の人にも「ここでポラック漁師になりな」と言われるほどでした(笑)。
タラの仲間で側線の走り方がとても特徴的、ヒゲはありません。小さい個体ほど赤みが強く、よく見ると体の真ん中あたりのオレンジ色がとてもきれいで、形もカッコいい! 新たなお気に入りの魚になりました。

ちなみにレストランで食べてみましたが、とても美味しかったです。自分でも料理をしてみたかったなあ。

英名:Poor cod
学名:Trisopterus minutus
最後の二日間、漁港で少しポイントを変えると、この魚が釣れました。ポラックと比べると丸っこい形で、目が大きくて愛嬌があります。"cod(コッド)"とは「 タラ 」のことで、現地でそう呼ばれていました。この魚は岸壁というよりは、止まってる船の下とか、少し暗くなっているところに集まっているようです。ルアーをなるべく沈めてゆっくり巻くと、よく反応してくれました。

続いてベラ科(Labridae)の仲間。

英名:Cuckoo wrasse
学名:Labrus mixtus
色がヤバいです。派手すぎ。しかし面白いことに、上から見てもそこまで目立ってはいませんでした。海の中で、頭の蛍光色がぼんやりと見えるような感じです。他の魚と比べると警戒心がやや高く、釣るのは少し難しかったです。"Cuckoo"とは鳥の「 カッコウ 」、"wrasse(ラス)"は「ベラ」のことで、ヨーロッパではそこそこ知名度のある魚なんだとか。地元の水族館でも展示されていました。

それぞれ個体によって色がちょっと違って面白いです。

英名:Corkwing wrasse
学名:Symphodus melops
こちらも凄い色をしています...。最大で25㎝程になるそうです。この魚は実習場の方で釣れました。柱に生えてる海藻の隙間をうろうろしており、目の前にルアーを通すと興味を示して、すーーーっと付いてきました。体高が高いためか、サイズの割には引きが強かったです。

英名:Rock cook wrasse
学名:Centrolabrus exoletus
街の漁港や実習場で何匹も釣れ、恐らくこの辺りの沿岸に広く分布している超普通種的なベラなのでしょう。基本、すぐルアーに反応しますが、口が小さいため針にかけるのが難しかったです。また、潮が止まってる時間はぱたりと当たりが無くなり面白かったです。

こちらの個体は街の漁港で釣れました。別の種に見えますが、赤いものと同じ種です。ベラの仲間は成長につれてメスからオスに性転換することが知られており、この個体はオスです。 Cuckoo wrasseとはまた違った青の配色がとてもきれいでした。

英名:Goldsinny wrasse
学名:Ctenolabrus rupestris
Rock cock wrasse ととても似ていますが、本種の方が若干スリムな体形をしています。背びれの先端と尾びれの付け根にある黒い点がチャームポイントです。Rock cook wrasse と同じようなところに生息しており、ルアーをゆっくり足元に落とすと、何匹かがわらわらと集まって順番につついてきて可愛かったです。

とても面白いことに、Corkwing wrasse、Rock cook wrasse、Goldsinny wrasse の 3種は、ノルウェーのサケ養殖場でサケに付き悪さをする寄生虫(サケジラミ)を食べてくれるため、重宝されているそうです。そのためにわざわざベラ漁もおこなっているのだとか(それで発生してる別の問題もあるようですが…)。

ちょっと話はそれましたが、以上が釣り採集の結果でした!
派手派手な魚や、渋くて美しい魚、思ってたよりもたくさん釣れて楽しかったです。個人的には釣れた魚たちは全部調理して食べてみたかった...! どんな味がするのでしょう。
釣りをしてると、地元の人によく声をかけられ、いろいろアドバイスをしてくれました。その中で、使っていた道具が小さくて何度か驚かれたことがありました。現地の釣具屋を覗いても、ルアーは最小で 7.0g のスプーンです。恐らくこの辺りの人たちは、漁港でこういう小さい魚は狙わず、もっと大物狙いの釣りをしているのでしょう。釣り文化が違うというのも面白いですね。いつか大物狙いもやってみたいものです。

ということで、番外編はここまで。次回はちゃんとクラゲのことを書こうと思います…!

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