5月 7日から13日にかけて、第10回 国際ヒドロ虫学会のワークショップが開催されました。
この学会はざっくり言えば、さまざまな学問の分野( 分類学、生態学、形態学、遺伝学などなど)で、クラゲ類について、特に「ヒドロ虫類」 を扱っている世界中の研究者が数年に一度集まり、わいわい研究発表会をしたり、みんなで採集調査をしたりする会です。この人図鑑で名前見たことある! とか、え?あの論文を書いた有名人? みたいな感じで、身の毛もよだつすごい人たちが集まります。
前回は 4年前。実は日本で開催されていたのですが、今年の開催地はなんとノルウェーのベルゲンです。個人的に海外に行くのは初めてで、パスポートをつくったり、現地のことを調べたり、準備の段階から結構ワタワタでした。
ノルウェーといえば…フィヨルド! 特徴的な地形から、街が見えるようなすぐそこの沿岸域でも、200mよりも深い海が続いており、深海性のクラゲが出現することが知られています。
ということで、ヒドロ虫学会で経験してきたことを、何回かに分けて日誌で書いていきますね。
まずは 7日、持っていた釣り竿を怪しまれ空港で何度か止められたものの、無事ベルゲンに着きました。そして、会が始まるまでの少し時間があったので、ベルゲン水族館を見学してきました。
入場してすぐにジェンツーペンギンやユーラシアカワウソの展示がありました。
広々のんびり。
外見的にはコンパクトな水族館かと思いきや、館内は結構広くて水槽数も多く、かなり見ごたえがあります。館内では、地元に生息するタラの仲間やカレイの仲間に加えて、ミンドロワニとかオオアナコンダとか、たくさんの爬虫類が展示されていました。あまり写真を載せすぎるとネタバレになってしまうので、私が一番気に入った生き物を…。
論文では「ノルウェーナマコ」とか「アカナマコ」とか呼ばれている、Parastichopus tremulusというナマコです。カニカマ。すごくカニカマです。向こうでは普通種のようですが、面白い見た目です。
水族館を 2時間ほど見学したあと、初日のプログラムへと向かいます。ベルゲン大学の博物館で「Ice breaker」。つまり、自己紹介を含めた懇親会です。
4年前の会で仲良くなった研究者の方や、普段からいろいろと関係を持っているパリ水族館のメンバーと久しぶりの再会。最初はカチコチでしたが、話しているうちに緊張もほぐれ、お互いの近況を共有することができました。異国の地でも、知ってる人がいるというのはとても心強いです。
8日から10日にかけては、研究発表会です。朝から夕方までがっつりと、合計44題の発表がありました。世界で最新の研究だなんてただでさえ理解するのも精いっぱいなのに、発表はすべて英語です…。だあぁぁ難しすぎる! 3日目には、頭が爆発寸前でした…。
どれも興味深い話ばかりだったのですが、中でも印象的だったのは、“えのすい”でも良く展示をしている「カギノテクラゲ」についての発表が 8題もあったことです。
このクラゲは、アメリカのとある場所で外来種(※日本からではありません)として最近よく見られるようになり、刺傷被害も増えているのだとか。毒の強いクラゲと言えば「アンドンクラゲ」や「カツオノエボシ」が話題になりがちですが、今後はカギノテクラゲも世界中で注目されていくのかもしれません。要チェックです。
“えのすい”からは、普段おこなっている「(ほぼ)毎日採集」を含めた、約 5年分の採集結果をまとめ、「Diversity and seasonal variation of the jellyfish fauna in Enoshima and adjacent waters, Sagami Bay( 相模湾江の島周辺水域のクラゲ相とその季節的変化)」というタイトルで発表してきました。
原稿を読みながらの発表でしたが、内容は伝わった… はず。みんな心優しく発表を聞いてくれました。これを機に、もっと海外の研究者の方々と研究の手を広げれたらいいなあ。発表を理解することは本当に本当に本当に大変でしたが、みなさまにクラゲの最新情報を伝えていけるよう、持ち帰った情報をもとに勉強を頑張ります!
さて、国際ヒドロ虫学会はまだまだ続きます。
次回は気になるクラゲ採集!ノルウェーのクラゲたちについて書いていきたいと思いますので、お楽しみに!