毎年、江の島で春から夏にかけてよく出現するウラシマクラゲ。今年の春もたくさんその姿を見ることができました。
傘のサイズは大きくても 2㎝ほどで、丸い傘と太めの触手が特徴的です。低めの温度で飼育すれば数か月生きる比較的寿命の長いクラゲで、生活史はすでに判明されています。あまり一般的には知られていませんが、図鑑ではポリプや稚クラゲの写真も見ることができます。江の島でも毎年出現する、まさに「普通種」なのですが、実は水族館的に重要な「繁殖」に関しては一癖あるクラゲで、ポリプの入手や維持が他の種と比べて難しく、残念ながら常設展示ができていないクラゲです。
“えのすい”でも過去にポリプからクラゲを遊離させたことがあるらしいのですが、その後ポリプは消失…。そのため、私は今まで本種のポリプを見たことがありませんでした。これまで個人的に何度か繁殖にチャレンジしてみたこともあったのですが、上手くいかず…。
しかし! 最近ちょっとコツを掴んだようで、1個体だけですが初めてポリプがとれました!! かなり嬉しい!!! しかも、クラゲが遊離するまでを観察することができました!! 図鑑でも見られるとはいえ貴重な記録。結構マニアックな話になってしまいますが、日誌で紹介させてください!
これは 6月18日のようすです。水槽の底で小さい肌色のウニのようなものが…! これがウラシマクラゲのポリプです。ただ、この時点ではまだ形が歪で、本当に本種のポリプかどうか確信が持てていませんでした。
2日後、少し大きくなり、触手も若干伸びました。この時点でもまだ半信半疑で、ちゃんと成長しているのかよく分かりません。
それから 4日後、ポリプの基部にいくつかのクラゲ芽(泳ぎ出す前の状態)ができているのを観察できました。このクラゲの形はまさにウラシマクラゲ! ここでようやくちゃんと本種のポリプがとれたことの実感がわきました。
そして 6月30日、ついにポリプから 2mmほどのクラゲが 3個体遊離しました! 正真正銘“えのすい”生まれのウラシマクラゲです。かわいすぎる!
私たちトリーターの間では、過去の経験からウラシマクラゲのポリプは「一度クラゲを出すと消失してしまう」という認識だったのですが、どうやらそんなことはなさそうです。最初のころに比べてなんとなく細々としている気はしますが、ちゃんと残っています。丁寧に給餌と換水をおこない、ポリプの維持に努めます。
遊離したクラゲはバックヤードですくすくと成長し、今では 4mmほど。触手も伸びてきて、成体とほとんど変わらない姿になりました。愛着しかありません。そろそろ展示デビューかも。
肝心のポリプはというと、またもやクラゲ芽を作っているようです。このままポリプを維持し続けることができれば、夢のウラシマクラゲの常設展示が可能となります。さてどうなるか…! たとえ今回それができなかったとしても、学んだ情報と経験を積み重ねて、いつの日か実現させたいと思います。ご期待ください!
今回はウラシマクラゲの繁殖について紹介しましたが、他のクラゲたち一匹一匹の裏側にも、これまでの試行錯誤や私たちの熱い気持ちが詰まっています。そんなところも展示から感じていただけたら嬉しいです。今後も頑張ります!