先日、2人の先輩トリーターがカニカゴ漁船に乗船し、海底 300m付近の深海生物の採集に行ってきました。
このカニカゴ漁には、たくさんの棘皮動物が入るので、どんな生き物が“えのすい”にやってくるんだろう?とわくわくしていました。
搬入水槽を覗くと、大きくて立派なオーストンフクロウニやウデナガゴカクヒトデ、名前の分からないウミシダなど、、、
その中に、ウニの棘に絡みついているクモヒトデを見つけました。
「?! あのクモヒトデ、見たことあるぞ!」
図鑑やインターネットを見漁っていたときに見た気がします。
でも、棘皮動物は個体差が激しく、色や模様が全然違うことはしょっちゅうあります。
手元に主要なクモヒトデ類を検索できる資料を持っていたので、種類の同定をしてみました。
対象のクモヒトデを顕微鏡で観察し、写真をたくさん撮ります。
その写真を見ながら、検索資料に載っている「○○がある or ない」「腕は○本 or ○本」という質問に答えていき、最終的になんという種類のクモヒトデなのか導き出します。
こちらが名前の分からないクモヒトデです↓
早速、同定開始!!(一部省略しています。)
1, 腕は樹状に分岐している?
⇒ 腕は5本に分かれているけど、樹(枝)のようにではない、これは NO!
2, 歯棘はある?対歯はある?
⇒ 体をひっくり返した下に口があり、その歯の形を見ます。
恐らくここ。
これは、、、歯棘も対歯でもなさそう。 NOかな?
3, 盤上に顆粒、あるいは棘がある?
⇒ 盤とは、クモヒトデ中央の体の部分です。
盤の上には、粒々の丸い模様があります。これは顆粒になるのかな? Yes!
4, 腕は5本?
⇒ 1枚目の全体像を見ると分かる通り、紛れもなく Yes!
そして最後の質問。
5, 小補足板は背腕板の末端のみに付いている?
⇒ 写真で確認すると、、、
このふちにあるのが小補足板です。
質問の通り、片側にだけ!!ついてます!! Yes!!
このクモヒトデの名前は、「ジュズヒモクモヒトデ」、、、かな!!
インターネットで検索すると、似た姿のクモヒトデが出てきました。
生態の説明にも「他の生物に絡みつく習性がある」とあるので、きっと間違いないでしょう!(多分、恐らく!)
しかし、ジュズヒモクモヒトデで本当に合っているのかちょっと不安なので、専門家の方に見てもらっています。
まだお返事はきていませんが、ジュズヒモクモヒトデで合っているといいなぁ。
現在は深海Ⅱにて展示していますので、ボウズウニに絡みつくジュズヒモクモヒトデ、ぜひご覧ください。
関連日誌
[2023年06月21日 棘皮動物に夢中]