2023年08月13日
トリーター:黒川

ベニクラゲ展示中

みなさんこんにちは。
現在、クラゲサイエンスにベニクラゲを展示しています。

このベニクラゲは、4月のある日、多忙を極める山本トリーターと、当直(仕事終わりにそのまま水族館に泊まって、夜間生物に異常がないか見回る業務)明けの私で、江の島で採集してきたのですが、きょうはそのときのエピソードをお話しさせてください。

詳しくはお話しできませんが、この頃ある場所にベニクラゲを展示する予定があり、どうしてもこのタイミングでベニクラゲを入手しなければならず、世界を股にかけるクラゲ界の申し子(と私は思っている)山本トリーターにベニクラゲの採集ポイントを聞きました。
すると「4年前だけど、今くらいの時期に江の島でベニクラゲ採れてたよ~」と言うのです。
それは採集に行かねば!と使命感に燃えた私は、わがままを言って山本トリーターに採集の同行をお願いしました。

疲れを通り越して“当直ハイ”になっている私は、ベニクラゲを求めて山本トリーターと自転車を走らせます。

自転車に乗る山本トリーター自転車に乗る山本トリーター

山本トリーターは、学生の頃からほぼ毎日クラゲ採集をしていたという、いわばクラゲ採集のプロ。
江の島でクラゲ採集、通称「よじよじ」をしたら右に出るものはいません。
しかし、このワンチャンスでうまいことベニクラゲを採集できるかは分かりません。

自転車を停め、しばらく階段を上がると裏磯に着きました。
来たのは久しぶりだな~と、海水で光り輝く磯をうっとり眺めている私を置いてきぼりに、コケでぬめる磯を、山本トリーターは一切の迷いもなくずんずん突き進んでいきます。

磯を迷いなく突き進む山本トリーター磯を迷いなく突き進む山本トリーター

海はそこそこ荒れていて、波がざばんと岩に打ち付けています。
「このあたりかな~」とある窪みへ。
柄の長い網を慣れた手つきで伸ばしていき、まるで刀を抜くように静かに水面につけます。
「クラゲが潰れるから、網はゆっくり動かして~ 岩肌の近くかな~ まあこのへんかな~」とゆる~~く網を動かした後、素早く網の中身をケースにうつす山本トリーター。
「あ、入ってる」
そんなゆるゆるな感じで1発目から入るわけ、、、えーーーー!!!!!ベニクラゲ入ったの??!!
「ここにいるよ~」とケースを見せてもらっても、私の寝不足しょぼしょぼの肉眼では1mmほどのベニクラゲは見つけられません。

私も見よう見まねで同じ場所で採集するも、なかなか入らず。
やっとの思いで1匹だけ取れましたが、苦戦する私を横目に山本トリーターは 10匹も採集していました。

見よう見まねの黒川トリーター見よう見まねの黒川トリーター

山本トリーター、この波打つ水面から1mmのベニクラゲが見えているのでしょうか、そう思ってしまうほど、まるで狙っているかのように次々採集していきます。

網を水面につけてゆっくり移動するだけの、一見簡単そうな採集方法「よじよじ」でも、こんなに採集結果に差が出るなんて。
“えのすい”クラゲ担当のレベルの高さを思い知りました。

その後、ポイントを変えると大きなカツオノカンムリを見つけました。

カツオノカンムリカツオノカンムリ

“えのすい”へ戻って顕微鏡でベニクラゲを見てみます。

ベニクラゲベニクラゲ

不老不死で有名なクラゲで、江の島で採集できたのは4年ぶりだったそうです。
念願のベニクラゲ採れたぞ~! と私はお祭り騒ぎでしたが、サイズが小さすぎるということで予定していた場所では展示できず、仕方なくクラゲサイエンスにて展示させてもらうことになりました。

その後、別の場所で採集したベニクラゲも追加され、展示水槽で順調に大きくなり、今では5㎜ほどの大きさになりました。
もう顕微鏡が無くても、肉眼ですぐ見つけられます。

現在展示中のベニクラゲ現在展示中のベニクラゲ

今回のベニクラゲは調子がいいみたいで、いつもより長く、もう4か月近くも展示しています。
クラゲ界の申し子が採集したベニクラゲ、ぜひご覧ください。

クラゲ界の申し子クラゲ界の申し子

クラゲサイエンス

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