2023年10月15日
トリーター:八巻

Bistroえのすい ~ふじさわサステイナブルレストラン~

みなさんこんにちは! 八巻です!

私の妄想から始まった企画「Bistroえのすい ~ふじさわサステイナブルレストラン~」。
おいしい料理を食べに水族館へ、不定期で“開店する”地元食材にこだわった水族館レストランがコンセプト。本日10月15日(日)、本当にたくさんの方のご協力をいただき、ついにオープンしました!!

本日のオープニングイベントには 49名のお客さまに“ご来店”いただき、地元江の島片瀬漁協で水揚げされた魚、シイラ、アイゴ、クロサバフグ、サワラ、アカカマスを使用した、堀内さやかシェフ、田村 浩二シェフのお二人がつくるおいしい料理をお楽しみいただきました。


また、お食事をお楽しみいただいている間のクロストークセッションでは、私とシェフのお二人、江の島・フィッシャーマンズ・プロジェクトの北村治之さんの 4人に、モデレーターとしてChefs for the Blueの佐々木ひろこさんに加わっていただき、江の島の海や水産物の現状と今後について、それぞれの立場からの気づきや問題点について、議論を交わしました。今回のクロストークがお客さまの今後の海を考えるワンアクションへのきっかけになれば幸いです。

ことの始まりは今年 2月、とある会議でご一緒したChefs for the Blue代表理事の佐々木さんとお話をさせていただいたときのこと。そこから約8か月半、一瞬で過ぎてしまった気がします。
例えば水族館で食育を目的としたイベントがおこなわれることはありますが、あくまで食育が目的で、料理はおまけに近い位置づけです。一方で、水族館で食事をするイベントもありますが、あくまで水族館という雰囲気のよい場所でおこなう食事イベントであり、水族館はおまけに近い位置づけです。
そこで私はかねてより、誰もが魅力的に感じるおいしい料理を本格的に楽しむことができて、かつ水族館が単なる会場になり下がることなく、水族館だからこそ発信できる問題やテーマを主体的に提起できるイベントをおこないたいと考えていました。しかし、もちろん私もおいしいもの好きの一人ですが、美味しい料理を作ってくださる料理人の知り合いなどいる訳もなく…あくまで妄想の域をでない状態でした。

ところが、チャンスは突然に降って湧くものなのです。冒頭でもお話した 2月におこなわれた「船の科学館 海の学びコーディネーター会議」で、日本の豊かな海と食文化の未来のために活動する料理人が集まって組織している団体Chefs for the Blueの代表理事佐々木さんの基調講演を拝聴することとなりました。そこで多様性に富んだ我が国の水産物を用いた食文化やその歴史を守っていくには、食の現場ではあまり知られていない、「水産物の生物としての側面や資源量」を、もっと広く知ってもらうことが大切ということを知りました。
これだ! と思い、思い切って佐々木さんに“私の妄想”の話をしに行くと、二つ返事で快諾、ぜひやりましょうと言ってくださいました。

一方で、もし妄想が実現することがあれば、地元江の島の海を考えるイベントにしたいという想いもありました。私はこの数年間、江ノ島・フィッシャーマンズ・プロジェクトの活動に参加させていただき、自らの目で江の島の海を知り、守り、伝える活動をおこなってきました。かつてカジメの海中林が存在したという江の島の海ですが、今は見る影もなく、カジメは消滅しました。拾っても拾っても拾いきれない海底ごみも溢れています。
しかし反面、スズメダイやハタンポ、ムツの大群が泳ぎ、岩の上にはタカノハダイやカサゴが乗り、アカメバルがホバリング。岩陰からは大きなクエやウツボが顔を出し、岩の隙間を覗いてみれば、イセエビや時にはアワビも隠れています。潮通しの良い岩礁ではヤギやトサカ類のポリプが開き、砂地にはハナギンチャクが触手を広げ、ふと気が付けばドチザメが横切る。こんなさまざまな生き物が生き生きと暮らす江の島の姿もやはり健在です。
それら実際に目の当たりにした、ありのままの江の島の姿をより多くの方に知ってもらいたい、という想いが今回の企画の文字通りの根底となりました。
漁港に水揚げされる魚もマイワシやマアジだけでなく多種多様です。そこで今回は、江ノ島・フィッシャーマンズ・プロジェクトにも協力を依頼し、江の島の定置網で水揚げされる魚を料理に使いたいと打診したところ、こちらも快諾。
飼育員×漁師×シェフのコラボレーションがにわかに現実味を帯びてきたのです。

このコラボレーションを通して、私の見てきた江の島の「今」を、普段海とはあまりかかわりのない方々にこそ届けたい、江の島の今を見て、何か小さなことひとつだけでも行動に移そうと一歩踏み出す人を増やしたい、そのためにも万人が魅力を感じる「おいしい料理」を地元江の島の魚でつくり、味わってもらいながら、それをきっかけに江の島の海を知って考えてもらう時間にしたい。延いては相模湾のこと、海のこと、水産物のことを考えるきっかけにしてほしい、今回の「Bistroえのすい」にはそんなメッセージを込めました。

終わってみればあっという間でしたが、ただの妄想に過ぎなかった私の想いに、Chefs for the Blueさんと江の島・フィッシャーマンズ・プロジェクトさんのご協力があり、一気に現実のものとしてくれました。

加えて協賛に井出農園さん、リッチフィールド株式会社さん、長後製パン株式会社さん、後援に藤沢市が加わり、さらに盛り上げてくださいました!
また、本企画実施にあたって館内外で多くの方にご協力いただきました。本当にありがとうございます。
「Bistroえのすい」はまだオープンしたばかりです! 今後も 2回目、3回目と続けられるよう、頑張っていきたいと思いますので、引き続き“ご来店”をお待ちしております!


本事業は、船の科学館「海の学びミュージアムサポート」の支援を受けて実施しています。

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