2024年10月23日
トリーター:渡部

帰ってきました。

みなさん、こんにちは。
先日 10日間の マレーシアクラゲ調査 から帰国しました。
目を閉じると、まだ色鮮やかなマレーシアの街並みが浮かぶような気がします。

さて、きょうはマレーシアで出会ったクラゲのお話です。
その名も、「リクノリーザ・マライエンシス」!「レッドクロスジェリー」や「クロスジェリー」という名で呼ばれることもあります。
河口付近に生息しているクラゲで、傘の内側に赤い筋模様が見られることが特徴です。
今回展示している個体はまだピンポン玉サイズですので、模様はうっすら赤いような感じです。今後の成長が楽しみです!

リクノリーザ・マライエンシスリクノリーザ・マライエンシス

今回は、日本に生息していないクラゲなので学名でご紹介しています。
学名は世界共通の名前で、属名と種小名で表されます。全てラテン語です。
今回のクラゲの場合は、リクノリーザは属名、マライエンシスは種小名にあたります。

当館でおなじみの、リクノリーザ・ルサーナと同じ属の仲間です。
小さい時の2種の形はそっくりですが、模様や傘の色合いが違います。

ピンポン玉サイズのリクノリーザ・ルサーナピンポン玉サイズのリクノリーザ・ルサーナ

また、種小名の「エンシス(-ensis)」は土地を表す接尾語で、「マライ(malay)」はマレー諸島を指すようです。マレー諸島に位置するインドネシアで採集された個体をもとに、1920年に記載されました。そういえば、ほかにもアマクサクラゲ( Sanderia malayensis )、ミズクラゲの仲間( Aurelia malayensis )など、マライエンシスと名付けられたクラゲは数多くいることを思い出しました。これらの種もマレー諸島で見られるクラゲです。

リクノリーザ・マライエンシス、私はマレーシアでよく見られるクラゲだと思っていたのですが、実は、マレーシア本島で初めて記録されたのは 2020年のことでした。思っていたより最近です。

ただ、今回のマレーシア調査の時に港で現地の漁師さんが、魚の仕分けをしている所を見ていたら、たくさんのリクノリーザ・マライエンシスが混ざっていました。

漁師さんによって仕分けされたリクノリーザ・マライエンシス漁師さんによって仕分けされたリクノリーザ・マライエンシス

現地の方にとっては、よく見られる普通種のクラゲなのかもしれません。実際に足を運んでみないと分からないことがたくさんあります。

今回の調査を通して、私は疑問を抱きました。それは、東南アジアの汽水域のクラゲたちがどんな一生を送っているのかということです。年間の水温の変化が少なく、クラゲがくらす河口の底面は砂泥です。さらに、エサとなるようなプランクトンよりもケイソウなどの植物プランクトンの多い地域です。
では、ポリプはどんなところにくっついて、いつクラゲになり、どんなエサを食べているのでしょうか。

これから飼育を通して、このクラゲの生態を解き明かしていきたいです。私たちのマレーシアクラゲ調査は、これからが始まりです。

クラゲファンタジーホール

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