“えのすい” で飼育している動物たちが安心して生活できるように、トリーターは日々さまざまな変化に動物が慣れていくように工夫をしています。
今回はフンボルトペンギンの話です。
“えのすい” では、フンボルトペンギンの飼育舎に出入りする際は、基本的には制服と胴付き長靴、もしくは合羽の格好です。この服装にはペンギンたちも慣れているため、仮に初めましてのお客さまがこの格好で飼育舎に入ったとしても、ペンギンたちは特別気にすることはないです。
逆にトリーターといえど、その服装が変わると見慣れぬ姿に警戒されることがあります。今回は私が普段着ているウエットスーツ姿にも慣れて欲しいと思って「ウエットスーツに慣れましょう作戦」を実施しました。
ペンギンたちにとってウエットスーツのトリーターは全く見たことのない姿という訳ではありませんが、まだ慣れていないのも事実。今回は餌も使って慣れさせるわけでもなく、なんとなく飼育舎に入り、興味を持つ子、はたまた警戒する子を見定め、ペンギンごとにどのようなリアクションがあるかを観察する作戦にしました。
大切なのは人から無理やり距離を縮めないこと。
警戒しているのに迫って来られたら怖いですよね。一方で興味があればペンギンから近づいてくるはずです。
飼育舎に入るとなんとなく数羽が身構える素振りを見せます。特に顕著だったのが、「ブラウン」。縄張り意識が特に強い性格で、縄張りに近づく人とペンギンにも攻撃的になる「ブラウン」が、きょうは誰よりも腰が引けていていました。
「ブラウン」の意外な一面を見ることができました。私のことを好いてくれている「テン」はというと、普段の制服姿のときと変わらず、きょうも私の腿(もも)に飛び乗り、なでてもらってご機嫌でした。その他のペンギンも観察していると、「ウメ」&「コハク」、「ソラ」&「ナイス」のペアは接近してきて、私の膝あたりをついばみ、(なんだこれ?)と言わんばかりにウエットスーツ生地に興味を示していました。
一番興味深かったのが、最年少の「ユイ」です。
少し腰の引けた格好でゆっくり接近してきて、嘴(くちばし)が届く距離になったら嘴一閃、つついてきました。
私が動くと一歩下がり、じっとしていればまた距離を詰めてくる。興味と警戒のはざまで葛藤しているようす、そんな姿を見せてくれました。
予想していたよりも強い警戒心を抱くペンギンはいなかった印象です。
このまま少しずつでいいので、ウエットスーツ姿のトリーターに慣れていってもらいたいです。