2025年01月13日
トリーター:山本

エチゼンクラゲを求めて

時折大量発生して世間をにぎわせる「エチゼンクラゲ」。ここ数年はあまりまとまった数は見られなかったようですが、今年度は15年ぶりに大量発生していたらしく、特に日本海側でニュースになっていました。私たちクラゲ担当もそれに合わせて日本海側でエチゼンクラゲ採集&展示の計画を立てていたのですが、海況とのタイミングが合わずに断念…それが続き、結局シーズンを終えようとしていました。
実は私は野生のエチゼンクラゲを見たことが無く、今回こそは絶対に見たい! と思っていたのですが、これはもう間に合わないか…とあきらめかけていたその時、ある一本の動画と出会いました。

「エチゼンクラゲ 大きくてちょっと厄介者。 でもきっとファンも多いのかなぁ…」

本州最東端に位置する、岩手県宮古市の重茂半島にある漁家民泊・海のみやこの方がInstagramにあげていた動画。漁中にエチゼンクラゲを見つけたようで、なんと投稿は当時の一週間前。もしや岩手に行けば見ることができるのでは…? まさに直感で海のみやこさんにすぐ連絡をしました。するとあっという間にいろいろ手配してくださり、特別に重茂の定置網に乗せていただくことに…!
ということで、行ってきました! 岩手県宮古市!

盛岡駅で名物のわんこそばを食べてから、車で宮古市まで向かいます。今回お世話になったのは、重茂漁業協同組合のみなさま。こんな突然エチゼンクラゲが見たいなんて普通じゃないわがままを、本当に心優しく聞いてくださいました。

出船は 3時ごろ。重茂漁港から出る定置網船に乗って出発です。本日は 2か所の網を上げる予定とのこと。さあエチゼンクラゲは見ることができるのか! それにしても寒い…。耳がちぎれそうです。

網上げが始まりました。なんだか大きな魚影が見えます! もしかしてあれは…エチゼn…

マンボウだった!! それも結構たくさん入っています。どうやら今年はマンボウがすごく多いそうです。んーー今回の網には入ってなさそうですね…残念。と思っていたその時「きょうはエチゼン結構入ってるみたいでよかったですね」と漁協の方が教えてくれました。え!?
どうやら私が巨大マンボウに気を取られているうちに、網に入っていたエチゼンクラゲはせっせと回収されていたみたいです。

ダンべ(青い箱)に回収されたエチゼンクラゲが! でかい!! 感動です!!! こんなに大きいクラゲに気が付かなかった自分にちょっとショックでしたが、見ることができて本当にうれしかったです。

ブレブレ写真ですがこの傘のザラザラ感、伝わりますでしょうか。結構固いです。

私と比べるとサイズ感はこんな感じです。んデカい!
さて、もう1か所の網に向かいます。次こそ見逃さないように…! 船の上から網の巻き上げを観察します。

いた!! エチゼンクラゲは中国海域の沿岸(黄海や東シナ海)で発生するといわれており、岩手までの長旅で形はあまり良くない状態でしたが、しっかり泳いでいます!


たくさんの魚に交じって 3個体ほどを見ることができました。拍動する姿にはとても迫力があります! エチゼンクラゲはそこそこの毒を持っており、魚が触れると商品価値が落ちてしまいます。そのため、先に回収して箱によけておくようです。今回はどうやらシーズンの終わりごろで数えられる程度でしたが、これが大量に入網していたとすると…ニュースや話には聞いていましたが、実物を見ることでその大変さを少しだけ実感することができました。

その後は漁港で水揚げ、選別、競りを見学し、漁協のみなさまと一緒に朝ごはんまでいただいてしまいました。もうみなさまの心暖かさに本当に涙です。新鮮なお刺身も最高でしたが、特にびっくりしたのがマンボウの腸のガーリック炒め! 魚とは思えないこりこりの触感で、すごくさっぱりしたホルモン? のような感じです。おいしかったなあ。

今回展示には繋がりませんでしたが、実物のエチゼンクラゲを見たことで、えのすいで展示するためにはどう採集して搬入するか、何を準備しなければいけないのか、さまざまなハードルを越える必要があることがよくわかりました…。このサイズです、一筋縄ではいきませんね。普通のクラゲ採集とは全く違う考えで挑まねば。来年の出現がどうなるかはまだわかりませんが、チャンスがあれば必ず展示に挑戦したいと思います! みなさまに見ていただけるよう頑張りますので、お楽しみに!

最後に、海のみやこのお二人と重茂漁協のみなさん、みなさまのおかげで野生のエチゼンクラゲを見ることができ、クラゲの飼育員として大きくレベルアップすることができました。絶対また行きます! 本当にありがとうございました!!

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