2025年02月09日
トリーター:藤田

サンゴとヒカリキンメダイ

こんにちは、藤田です。
実は昨年10月に担当を異動していました。
約2年半担当した相模湾ゾーンの水槽やカピバラを離れ、現在は太平洋 暖かい海の水槽やウミガメなどを担当しています。
異動してからも日誌では相模湾大水槽やウツボに関する話ばかりしていたので、そういえば新しい担当水槽のことを紹介していませんでした。
そんなわけで今回は、最近私が特に気にかけている水槽と生物のお話です。

それがこちらの水槽です。

一見地味ですが、太平洋 暖かい海のチンアナゴの水槽とトロピカル水槽の間に位置するこの水槽は、サンゴをメインに飼育しています。
私が担当になってからすでに何度かサンゴや岩のレイアウトを変えたりして地味~にマイナーチェンジしてきました。
その理由の一つが、こちらのサンゴがメインの水槽でヒカリキンメダイの展示を計画していたからです。

ヒカリキンメダイは光る魚として有名ですね。
目の下に大きな発光器をもち、ここに発光バクテリアが共生していて、ピカピカと緑色がかった光を放ちます。

ヒカリキンメダイヒカリキンメダイ

強い光を必要とするサンゴと暗いところを好むヒカリキンメダイを共存させるには、明るい環境と暗い環境を同時に作る必要があります。
以前同じ水槽でヒカリキンメダイの展示をしていた時は、擬岩の下の影になる空間をすみかにしていたそうです。
今回も同じよう擬岩の下にいってほしいなぁと淡い期待を込めて、バックヤードで畜養していた個体を展示に出したのですが・・・最初は全然うまくいきませんでした。
水槽に展示したヒカリキンメダイの姿がまっっったく見えないのです。
しばらく見かけなかったので、うまく生きていけなかったのかな、と落ち込んでいたのですが、ある夜の真っ暗な水槽を見たときにピカピカと発光するヒカリキンメダイが泳いでいました!

以前と水槽内の環境が違い、サンゴの数が増えて岩組みも大きくなり、隠れ家となる暗い隙間がいっぱいあったので、暗い場所を好むヒカリキンメダイは前からは全く見えないところに隠れてしまっていたのです。

ヒカリキンメダイが落ち着ける暗所でありつつ、お客さま側からもヒカリキンメダイの姿が観察できるような環境を目指して、先月の休館日に手を加えました。
まずはこの水槽、アクリルガラスが傷だらけで中が見えにくかったため、かねてよりSトリーターが研磨の計画を休館日に織り込んでいました。
研磨作業をするためには水槽の水をすべて抜く必要があります。
つまり水槽内にいるすべての生物を水槽から出さなければなりません。
というわけで、空っぽになった水槽に一からサンゴや岩を再配置することになったのです。

空っぽでピカピカの水槽に水をためているところ空っぽでピカピカの水槽に水をためているところ

(余談ですがSトリーターがこの水槽のアクリルを研磨している間、私はHトリーターとトロピカル水槽の魚たちを移動するため網で捕まえていたのですが、苦戦して魚たちにもてあそばれているのが水槽越しにバレていて恥ずかしかったです。)

さて、Sトリーターのおかげでピカピカになった水槽に水を張り、循環して少し日を置いて水温などが落ち着いたところで改めて生物を水槽に戻していきます。
ここでまたまたSトリーターにサンゴを運んでもらいながら、私は水槽に入ってサンゴを配置していきます。
狙った空間にヒカリキンメダイが入ってくれるように、それ以外の場所はなるべくシンプルなレイアウトにしました。
もちろんサンゴが主役の水槽なので、照明が強く当たるところにより光を必要とするサンゴを配置して、といったように調整していきます。(サンゴについてまだまだ知識不足で勉強中なので、Sトリーターにアドバイスをもらいつつ配置しました。)

ここに入ってほしい!ここに入ってほしい!

この擬岩の下が水槽内で一番暗い場所なので、ウミトサカとウスコモンサンゴでちょっと影を作りつつ正面からも観察しやすいようにして、誘導します。

ちゃんと狙い通りに入ってくれました!!!
上の写真には3匹のヒカリキンメダイが写っています。見つかりましたか?
休館日から半月ほど経ちましたが今のところは日中もここで落ち着いてくれています。
水族館が閉館して照明が消えるとスーッと水面まで上がってきて、餌もよく食べるくらいまで慣れてきました。
そして暗い水槽の中では元気にピカピカと光っています。
この場所を見れば日中でもほんのちょっと光るヒカリキンメダイが観察できると思います。

今後も改良を重ねてより良くしていきますので、ぜひこの水槽(チンアナゴとトロピカル水槽の間!)も注目してみてください。

太平洋

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