“えのすい”には 相模湾ゾーンの海岸水槽の中に、干潟の水槽があります。
神奈川県三浦市にある江奈湾の干潟をモデルにしており、展示生物も江奈湾に生息している生物のみに絞っています、が… 勝手に仲間入りしてくる生物がいるんです。
その名は通称カーリーこと「セイタカイソギンチャク」。生物にくっついてきたり海水に混ざったりなどしてほとんどの水槽に勝手に現れる厄介者です。
少しいるくらいなら別にこれといって大きな悪さをするわけではありませんが、サンゴなどに触れてしまうとサンゴがダメになってしまうほどの毒を持っていたりもします。
そして繁殖力が非常に強く、水族館では配管内にはびこって水を詰まらせたりすることもある、そんな生物です。
例に漏れず干潟の水槽にもたくさんはびこっており、世界観が崩れて嫌だなぁ…と思っていたため、思い切って江奈湾で生息が確認されているイソギンチャクと交代してもらうことにしました。
江奈湾にいて近場の江の島でも採集できるイソギンチャクは… と調べてみると、「タテジマイソギンチャク」「ウメボシイソギンチャク」「ヨロイイソギンチャク」「ミドリイソギンチャク」「ミナミウメボシイソギンチャク」が該当しました。
よし、Let's イソギンチャク採集!
とはいいつつ、これまでイソギンチャクなんて採集したことがありません。
どうするか悩み、岩場からイソギンチャクを外すためのほそーーーーーーいスプーンと、採集したあとバケツに引っ付かないようイソギンチャクを入れる袋を持って出発。
まずはそこら中にいるヨロイイソギンチャクに目を付けました。が、予想以上に岩場の奥に入り込んでいて剥がれない…
指でほじほじしたり、スプーンでほじほじしたりしながらなんとか採集していきます。
イソギンチャクの引っ付いている足の部分は「足盤」というのですが、調べたところによるとほんの少しであれば足盤は傷ついても大丈夫だそう。
傷なんてつけないで採集したるぜい!!と意気込んでいましたが、めちゃくちゃ強固にくっついていてかなり厳しかったです。
しかも足盤の中央にはすぐ内臓があるのでそこが傷ついてしまったら一発アウト。ひやひやしながら採集を続けました。
イソギンチャクの採集ってこんなに難しいのか―!と実感しながら最終的にはなんとか「ヨロイイソギンチャク」「ウメボシイソギンチャク」「ミナミウメボシイソギンチャク」をゲット。
「タテジマイソギンチャク」はとても小さな個体しかいなかったため、今回は見送ることにしました。
しかし、“えのすい”に帰るとクラゲ担当のKトリーターから「タテジマイソギンチャクならクラゲのバックヤードで繁殖してるよ」と。
!!!!?????
教えてもらった場所がここ。
Why????
いつ入り込んだのか一切不明だそうです。
小さな個体も多いのですが、排水口にいるためここにいる個体は駆除対象となっていまいます。
それなら小さくても心おきなく採集できる!!!! と歓喜しました。
てことで、どんな感じに採集しているのかちょこっとお見せします。
この床の上にいる子たちはコンクリの凹凸が細かく採集が困難なため NG。
排水口の中にいる子たちはコンクリがつるつるなので採集にうってつけです。
この排水口のグレーチングは残念ながら外せなかったため、隙間からピンセットを差し込みます。
ちょっとずつぺりぺり剥がし…
剥がれたところでキャッチ!
無事に回収しました。
とりあえずこれだけ回収してみました。でもまだまだ大量に排水口にはいます。
こんな感じで採集したあとは展示です。
展示してからも意外と大変でした。ここにいてねーと石のすぐ近くに安置しても翌日、翌々日には自分で移動しています。Oh no...
そこでバックヤードで石に活着させてから干潟の水槽に出してみましたが、やはり展示に出すと移動... それぞれお好みの場所があるのでしょう。今は諦めてそれぞれにお任せしております。
では最後に、干潟に展示しているイソギンチャクたちの写真です。
こちらがタテジマイソギンチャク。縦縞がトレードマークです。
これはウメボシイソギンチャク。