2025年06月03日
トリーター:八巻

南大東島で深海洞窟探査プロジェクトD-ARK特別イベントを実施しました!

南大東島は、沖縄島から東に約350 km進んだ先にある、サンゴ礁が隆起してできた海洋島で、北大東島、沖大東島とともに大東諸島と呼ばれます。島の周囲は切り立った石灰岩の崖で、そのまま深海底まで急峻が続いています。
この島の周辺は、昨年5月に深海洞窟の生物相調査をおこなった海域でもあります。昨年の調査では南大東島と北大東島の深海底に大きな洞窟を発見、さらに日本初記録の魚類「ホラアナヒスイヤセムツ」や新種のゴカイのなかま「ダイトウヒメクマノアシツキ」など新種や希少種の生息を明らかにしました。この深海洞窟探査プロジェクトを我々はD-ARK(Deep-sea Archaic Refugia in Karst)と名付け、3か年でおこなっている最中です。
今回はD-ARKの調査海域としてお世話になっている島の一つである南大東島の方々にこのプロジェクトもっと知ってもらうことを目的として、5月31日(土)と6月1日(日)に南大東村主催で特別イベントを実施しました。
私は主に島の子どもたちも楽しめる移動水族館と水中ドローン操縦体験を担当しました!

移動水族館移動水族館水中ドローン操縦体験水中ドローン操縦体験

今回のイベントのおかげで、昨年の調査中ずっと眺めていて、行ってみたかった南大東島にようやく上陸することができました!
海から見ていると、そりたつ崖に視界を阻まれ島のようすが見えませんでしたが、上陸してみるとサトウキビ畑がたくさんある一方でビロウの原生林も残されていて、温暖で過ごしやすい島でした。

サトウキビ畑サトウキビ畑ビロウの原生林ビロウの原生林

珊瑚礁が元になってできているため鍾乳洞がたくさんあります。

鍾乳洞鍾乳洞

一度も大陸と繋がっていない海洋島であるため、ダイトウオオコウモリやダイトウヒラタクワガタなど固有の生物も多く、ぜひ見てみたかったのですが今回は実際に見ることはできませんでした。
また、今回はイベントを実施するほか調査も計画しており、調査をしながら準備を進めるため、余裕を持った日程で大東島入りしました。
調査のようすは後ほどフィールド調査で紹介しますね!

私はこれまで、“おでかけえのすい”として近隣のショッピングモールなどで実施する移動水族館の設営、運営には携わったことがありました。しかし今回のような遠方の島嶼(とうしょ)で実施することは初めてでしたので不安もありましたが、何よりわくわくする気持ちとやりがいが勝り、楽しく準備を進めているうちに、あっという間に実施日を迎えました。

資材の多くは事前に輸送を済ませており、当日は展示する生き物を運ぶだけでしたが、生き物を無事運べるかが一番心配していたことだったので、無事運ぶことができたのはとてもうれしかったです!

航空貨物便で無事届いた生き物航空貨物便で無事届いた生き物

展示を予定していた水槽は5つ、「川の生き物水槽」、「オオグソクムシ水槽」、「南大東島の深海生物水槽」、「南大東島の沿岸水槽」、そして「タッチプール」です。
川の生き物とオオグソクムシ、南大東島の深海生物の一部をえのすいから輸送し、沿岸生物とタッチプールに展示する生き物は、南大東島で採集したものを展示しました。

川の生き物水槽川の生き物水槽オオグソクムシ水槽オオグソクムシ水槽南大東島の深海生物水槽南大東島の深海生物水槽

今回はプロジェクト代表のJAMSTECのほか、琉球大学やいであ、FullDepthのD-ARKメンバーも参加していましたので、とても心強い“採集部隊”の活躍によって、バリエーションに富む大東島の沿岸生物、深海生物を採集、展示することができました!
沿岸生物は琉球大学、いであの方が魚名板を絵つきで書いてくださり、とても充実した水槽に仕上がりました!

南大東島の沿岸生物水槽南大東島の沿岸生物水槽

深海生物もFullDepthの水中ドローンで生物を追加採集することができ、展示も充実しました。採集した生物についてはフィールド調査でお見せしますね!
タッチプールは常に子どもたちに囲まれ、一番人気の水槽となりました!

タッチプール

同じ会場で、星砂を探すワークショップや南大東島にゆかりのある魚類の標本や論文の紹介、また今回採集された魚類の冷蔵標本展示もおこなったほか、深海洞窟を探る!トークショーも開催しました!

星砂をさがそう!

南大東島ゆかりのさかなたち展示


南大東島の魚類冷蔵標本展示

深海洞窟を探る!トークショー

別日に開催した水中ドローン操作体験イベントは南大東村全面協力の元、驚くべき快適な環境で実施することができました!

エアコン完備のコンテナルーム

D-ARKプロジェクトで実際に使用し、先日のえのすいの深海展でも大活躍した FullDepthの「Tripod FinderⅡ」と、当館の水中ドローン、「Dive Unit300」の2機体制で行いました。

「Tripod_FinderⅡ」(左)と「Dive_Unit300」(右)

琉球大学の魚類研究者の方々の的確丁寧、しかも熱い解説のもと、たくさんの魚類のほか、ウミガメも見ることができ、参加した方々も大興奮でした!

琉球大学の方の熱い解説

泳いでいくウミガメ

今回のイベントを通して、南大東島の方々にD-ARKプロジェクト同様、新たな発見とその楽しさをご提供できたものと思います!
改めまして、イベントの準備、運営にかかわってくださった方々、またイベントに参加してくださったみなさま、本当にありがとうございました。

今年度の調査も迫ってきました。またフィールド調査でお届けしますのでどうぞお楽しみに!

D-ARK(Deep-sea Archaic Refugia in Karst)

本プロジェクトはオーシャンショット研究助成事業の助成を受けています。
オーシャンショット研究助成事業は、日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されています。

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