2025年07月24日
トリーター:石川

ペンギン夏の風物詩

梅雨は来るのかと思っていたら、来るには来たが、あっという間に猛暑へ突入してしまい、春から初夏の移り変わりを感じるような余裕がなく、気が付けば夏鳥が鳴いている。
セミが鳴かないと思っていたら、ちょっと涼しくなった途端にニイニイゼミが鳴き、アブラゼミが鳴く、熱波のような日が続くと、土から出てきたミミズたちがアスファルトで干からびている。
生き物たちもタイミングをつかむのが難しそうです。

さて“えのすい”のフンボルトペンギンの夏の一大イベント換羽(かんう)も唐突に始まった感があります。抜けはじめは、どのペンギンも昨年より低めの体重で、最年長の「ルビー」、そして「ソラ」、「チッチ」から始まりました。
最年長の「ルビー」は、例年換羽で古い羽が浮き始めると、その状態が嫌なのか、夢中で羽繕い(はづくろい)をして一気に抜こうとするのが特徴です。朝一番の「ルビー」が抜けた羽のサークルに入っているような状態をよく見ました。今年の「ルビー」は、お腹の羽が抜けはじめて嫌なのか、夜お腹を「サニー」へ押し付けて、「サニー」がもぞもぞするのを利用して、一晩でお腹の羽をほとんど抜ききってしまいました。ちょっとずるい感じです。
「イト」と「リリー」の仲良しペアは、これまであまり相互羽繕い(そうごはづくろい)をしているところを見たことがありませんでした。
相互羽繕いは仲良しのペアや番(つがい)が、お互いの絆を深める行動として相手を羽繕いしてあげる行動で、その頻度はさまざまです。
この行動が普段はあまり見られない「リリー」と「イト」が、珍しく早朝に真ん中の岩の上で、「リリー」が「イト」の羽繕いを一生懸命してあげていました。「イト」が換羽のため急に羽が浮いてきて、かゆい所へ手ならぬ足がとどきにくくなってきているのか、どちらにせよ、この雰囲気は良い感じでした。

「リリー」と「イト」の羽繕い「リリー」と「イト」の羽繕い

さて、換羽の兆候はまず摂餌欲からわかります。通常4,000gくらいの体重があるペンギンですが、5,000gを超える体重増加をして換羽のためのエネルギーを蓄えます。
1~ 2週間で急激に体重を増加させるため、摂餌欲が半端ないのです。他個体の餌も奪い、魚をもらうための要求はトリーターへもとまりません。
他のペンギンに魚を与えているときに待ちきれないと、トリーターへかみついて要求してくるペンギンもいます!!
この時期に背後をとられると膝の裏あたりの柔らかいところに赤い血豆やかみあざが絶えなくなります。
そして新しい羽が羽軸の根元から古い羽を押し上げるので、全身の羽毛が膨れ上がり 2倍体のようなペンギンが出来上がります。
こうなると新しい羽に押し出されて古い羽が抜けてくるのです。
ここでも性格が出るようです。我慢できずに激しい羽繕いで新しい羽に押し出される前にがりがり羽繕いをして抜いてしまうタイプと、ひたすらじっとして勝手に抜けていくのを待つタイプとに分かれます。
水浴びも本来はあまりしないはずなのですが、水浴びをして抜いてしまうペンギンもいます。換羽という生理現象なのですが、対処の仕方は個体の個性がでるようです。
あと重要なのは体の柔軟性! くちばし、足の爪、翼を使って羽繕いをしますが、体が柔軟なほど届く場所が増えるので、早く古い羽をかいてとることができます。どうしても届きにくい背中の真ん中や首の後ろ、頭の後ろは最後まで古い羽毛が残ってしまうところです。
これが昨年のトリーター日誌(2024/11/14 2024年ペンコレ出そろいました!!)でもお伝えした換羽期のさまざまな抜け残り方になるのです。
これからしばらくはペンギンコレクションが楽しめますよ!!

ペンギン・アザラシ

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