2025年07月23日
トリーター:村井

小さな結晶のお話

みなさんこんにちは。
村井です。
展示飼育チームに配属されてから 1年が経ちました。
もう 1年経ったことに驚きを隠せません。ここしばらくイカのお話しかしていなかったので久しぶりに魚の話をしようかなと思います。

この 1年間、担当水槽で死んでしまった魚の耳石を収集していました。
耳石とは魚の頭の中にある三半規管の一部の小さな石のようなものです。耳石は炭酸カルシウムを主とした結晶です。

こんな感じです。
これはヤマトコブシカジカの耳石です。
大きさは 1cmです。

ヤマトコブシカジカヤマトコブシカジカ

魚の種類によって形が違います。
魚の種類や大きさにもよりますが大体 1cm未満のことが多いです。

耳石は魚の脳のすぐ近くにあります。

これはサケビクニンの頭部です。
写真左側の青い矢印で示した白くて丸いものが脳です。
その右側の赤い矢印で示しているのが耳石です。左右に 1つずつあります。
(実は耳石には扁平石、星状石、礫石の 3種類がありますが便宜上一番大きな扁平石を耳石と呼ぶことが多いです。)
よく見てみると白い影があるのが見えると思います。

取り出して顕微鏡で見てみるとこんな感じです。
不思議な形ですね。
丸いですが中央に向けての切り込みがあり縁辺部もでこぼこしています。先程のヤマトコブシカジカと比べるとだいぶ形が違いますね。

サケビクニンサケビクニン

これはクルマダイの耳石です。
ヤマトコブシカジカ、ザラビクニンの耳石と比べると厚さが薄く、耳石の模様がお花のように見えます。

クルマダイクルマダイ

こんなに小さな耳石ですが、その小さな結晶の中にはたくさんの情報が詰まっています。
耳石の表面や断面の輪紋を読み取ることで魚の年齢や過去の成長を知ることができます。
より細かく見ることで日輪が見えたり、微量成分を分析することでその魚の生活史も推測できるようになってきました。
魚種によって形が違うので、他の魚の消化管内に残っている耳石の形から、その魚が食べていた魚の種類もわかることもあります。
さまざまなことを教えてくれる大切な結晶です。
まだ集めているだけですが、後々は魚を飼育している強みを生かして 1本の輪紋が作られる期間の推定や輪紋幅と生活環境の関係などを調べて野外で捕獲された個体の解析に役立てられたらいいなと思っています。

みなさんも魚を食べることがあったら、耳石の発掘にチャレンジしてみてくださいね。

相模湾ゾーン

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