2025年12月01日
トリーター:杉村

ユノハナガニの行動に注目!

展示水槽(深海Ⅰ~JAMSTECとの共同研究~)のユノハナガニの行動に注目しててください。

ユノハナガニは、水深 400~1,300mの熱水噴出域で生活していて、海底から湧き出る温泉に集まる性質がある “温泉大好きのカニ” です。
深海の水深 1,000mでは 水温が約4℃にまで下がり、まるで冷蔵庫なみになります。
ユノハナガニが、なぜわざわざ熱水に集まってくるのかというと、体内の消化酵素を熱水の熱によって活性化させているのではと考えられています。

えのすいでは、これまで自作の熱水噴出装置を使ってユノハナガニの飼育をおこなってきました。
そのなかで、ユノハナガニはいったい何℃の海水を好むのだろうか? という疑問が湧き出し、試行錯誤の結果、安定して 35~ 40℃までの温水を作りだして、指定した温水を水槽内へ噴き出せることを可能にした新たな温水噴出装置を作ることができたので、水温別の行動を観ることにしました。
その結果、まだ精査は必要なものの、15~25℃(個体によっては 30℃近く)の間の温水を好むことが分かってきました。
彼らは自分の好きな温度の温水が噴出されると自ら寄っていって、背部や腹部を温水の噴出口に当てていました。
ちなみに 35℃以上になると、温水に当たらなくなるか、噴出口から少し遠巻きに離れるかして自分で最適な温度を調整しているようでした。

この行動を見ていただきたくて、展示水槽ではヒーターを仕込んだ簡易的な熱水噴出装置を設置して、自作の疑似チムニー(熱水噴出口にできる煙突状の構想物)を作って熱水噴出口を再現して、ユノハナガニを飼育・展示しています。
噴出口からは 15℃程度の温水が噴き出るようにしてあります。
ユノハナガニを観ていると、噴出口でじっと体を温めている時間と4℃の冷たい場所を何度か行き来していることがわかります。
常に温かいだけではだめなんですね。
自分が好きな温度を感知して、温度の調節をしているなんてすごいですね。
実際の深海の調査でも、常に温かい場所にいるわけではなく、チムニーの裾の方の冷たい場所にもいることがあるので、水槽の中でも同じような行動を見せてくれているというわけですね。

深海の環境で継続した観察をおこなうことは、現状 非常に困難です。
できるだけ深海の環境に近い飼育環境を作ることで、水族館ならではの継続観察と研究を今後も続け、展示に反映していければと思います。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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