2025年12月09日
トリーター:唐亀

サメとコバンザメ

レモラ
ギリシャやローマの海に現れた、頭に吸盤を持つ青白い小魚の怪異。群れを成して現れ、船底に取り付き船を止める。 1尾で400人乗りの大型船を止めることもできるという。

現在、相模湾大水槽には 2尾のコバンザメがおります。普段はそれぞれクロヘリメジロザメとドタブカに 1尾づつついています。ドタブカについている方はほとんどぴったり吸盤で腹に吸い付いていますが、クロヘリメジロザメの方はどちらかというと吸い付かず、 2cmぐらい隙間を開けてついて泳いでおり、ときどき吸い付いています。どうやらコバンザメに吸い付かれるのはあまり気分が良いものでは無いようで、初期のころクロヘリメジロザメは嫌なときに体をくねらせるようなアピールをしていたようです。なので、直接吸い付かず、ほんの少し隙間を開けて妥協しているようです。
実は以前いたコバンザメも大きなホシエイに吸い付こうとしてみなに嫌がられ(ホシエイは皮膚が柔らかいので吸盤の跡が付いてしまいます。そのためか、吸い付かれるとあからさまに体をばたつかせて払い除けていました)、仕方なく数cm隙間を開けてエイの腹の下について泳いでいました。そして挙句には相模湾大水槽の壁に吸い付くようになっていました。
ドタブカは嫌そうなアピールをしているようですが、かなりがっしりと吸い付かれています。コバンザメの性格なのか、吸い付かれる方のアピールの仕方なのか分かりません。

クロヘリメジロザメとコバンザメクロヘリメジロザメとコバンザメ

朝方、ときどきクロヘリメジロザメにコバンザメが 2尾ついていることはあるのですが、おととい、ダイビングショー「フィンズ」の出待ちをしている時に、何かの拍子でクロヘリメジロザメに 2尾ついたのです。するとクロヘリメジロザメは早く泳いだり、急転回したり、普段は降りない底の方に急降下したりして振り解こうとしています。コバンザメたちは振り払われまいと吸盤で吸い付きますが、やはり吸い付きやすい所があるのでしょう、あごの下辺りに吸い付いている方は安定しているのですが、体側などに吸い付こうとしている方はたびたび振り解かれそうになっています。
イルカの子どもが親に寄り添うと、親の流線型の体に逆流する渦ができ、それにうまく乗ることで、ほとんど自力で泳がずに親と並泳できるのです。クロヘリメジロザメはわざとその水流ができないように泳いで、コバンザメを振り解こうとしているようでした。その間、ドタブカは荷がおりたようにゆったりと泳いでいました。しばらくクロヘリメジロザメはいろいろ試みていましたが、やおらドタブカの後ろをゆっくりと追尾し、急に体当たりをしたとたん、1尾のコバンザメがドタブカに乗り移りました。そのさまは、クロヘリメジロザメがドタブカにコバンザメを擦り付けたように見えました。
クロヘリメジロザメは残った 1尾を従え、通常通りの泳ぎに戻りましたが、ドタブカは不意を突かれたようで急に泳ぎが早くなり、しばらくパニックになっていました。

現在、コバンザメの仲間で学名にレモラが使用されているものがいます。英名の一つにも使用されていますが、船を止める怪異はコバンザメだったのでしょうね。
ちなみにレモラの語源はラテン語の「遅延」や「障害」です。
コバンザメが悪者みたいに書いてしまいましたが、コバンザメは大きな魚について泳ぐ魚(スギなど)が背びれの棘条(きょくじょう)が吸盤状に変化したとても興味深い進化を遂げた魚です。人の慣れる個体もいて、かつてはダイビングショー「うおゴコロ」にて「キューちゃん」というコバンザメが一緒に泳いでくれていました。

相模湾ゾーン

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