2025年12月31日
トリーター:園山

「くらべてみよう サンゴとわたし」8:北限記録のミドリイシ

2025年12月23日に立教大学の大久保先生の論文が公開されました。論文の内容は、これまで報告されていたミドリイシの仲間の北限記録が更新されたというもの。
確認された場所はえのすいの近くの笠島周辺の海域です。
サンゴの仲間は、これまでトリーター日誌でも紹介しているとおり、えのすいの目の前にある江の島周辺でもたくさんいますが、その多くが光の当たらない所に生息する八放サンゴの仲間です。

江の島周辺で見られる八放サンゴ類江の島周辺で見られる八放サンゴ類

今回論文で報告されたミドリイシの仲間は、一般的には The 南国のサンゴ というイメージが強いかもしれません。ミドリイシは褐虫藻と共生しており、体内の褐虫藻が光合成し、その結果作り出した栄養をミドリイシが使って成長します。そのため、光の届かない暗い海ではなく、太陽の光が降り注ぐ浅い海に生息しています。ミドリイシなどは石灰質の白い骨格を持っており、褐虫藻が海水の高水温などの影響でサンゴの体から抜けてしまうと、体内の骨格が透けて見えて白化と呼ばれます。
この褐虫藻を持ち、石灰質の骨格を持っているサンゴ仲間は、ミドリイシ以外にもたくさんおり、イシサンゴや有藻性イシサンゴとも呼ばれます。
このミドリイシをはじめとするイシサンゴの仲間がこれまで相模湾に全くいなかったのかというと、そういうわけではないようです。
1968年に出版された『相模湾産ヒドロ珊瑚類および石珊瑚類』を確認すると、すでにアミメサンゴ、ニホンアワサンゴ、イボサンゴなど現在でも確認できる種が多く記載されています。それによると、ミドリイシは当時館山湾で確認されています。
現在は、相模湾のなかで伊豆半島や三浦半島で確認でき、特に真鶴で密集した群生地があり、まるで南国のような景色が広がっているようです(まだそのポイントに行ったことないので行きたい!)。実際、先日三浦半島で潜ったときに、小さいですが 3cm程度のミドリイシを確認することができました。

よく見ると中央に少しトゲトゲしたような盛り上がりをみせるミドリイシが写っていますよく見ると中央に少しトゲトゲしたような盛り上がりをみせるミドリイシが写っています

しかし、今回の論文で報告に用いられたサンゴは大きいもので、直径 35cmほどもあります。そして!! ご厚意で、そのサンゴ 1群体を当館の展示水槽で展示する運びとなりました!!! ありがたい!

こちらがそのサンゴです。

大きさを伝えようとトリーターと並べてみましたが、ちょっとわかりにくいですね。。。。
調査地には直径 60cmのものもあるようです。
その内、江の島周辺でもミドリイシが成長し、その周りに南方の魚が隠れているのを見る日が来るかもしれません。論文では、この海域の環境がこの10年で大きく変化したことを示しているとされています。藻場が良いとかサンゴが良いとかという話ではなく、これからも引き続き、今の相模湾のようすを記録していきます。

さてさて、そんな話をしている間に2025年も終わり、2026年がやってきます! みなさんはえのすいのウェルカムラウンジにある絵馬を見ましたか?
ここにはトリーターなどの 2026年に向けた抱負などが書かれています。私の 2026年の目標はこれ! サンゴに限らず、相模湾をみなさまにお伝えできるよう、調べて調べて調べつくします!!
みなさま 2025年もありがとうございました! 2026年もどうぞよろしくお願いいたします。
良いお年を~

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