こんにちは!
潜航が始まって、きのうまでとてもいい天気でした♪
乗船の醍醐味の一つとして、夕日を見ることがあります。夕方頃に外に出ていくと、周りに何もない海の上に太陽が赤み帯びて傾いているのが見えます。
しばらく海風に当たりつつ手すりに寄りかかって眺めていると、どんどん空が赤く染まって行きます。
太陽が水平線へと近づいていくと、空は暗くなってきているけれど太陽の強烈な赤に染まっていきます。この空が私は好きです。
作業が忙しくない限り、仕事を中断してカメラ片手に見に行きます。そして、ふと周りを見ると、周りに研究者が同じようにカメラを持って、同じように赤く染まった太陽の方をゆったりと眺めています。
ようするにみんな夕日が好きなんですね。
そして、なぜか毎日写真を撮ってしまいます。きっと実際に見たものと撮った画像が違うからでしょうね。
この雰囲気を写真に収めつもりが、画像をみるとただの夕焼け空の写真になっているのが納得いかないんです(たぶん)。
きっと永遠と夕焼け写真が溜まっていくのでしょう・・・ 。
でもきょうは雨。海上一面ガスてしまっていて何にも見えません。
海の上に「よこすか」だけ取り残されているような感じで、外を眺めていると今にも幽霊船が出てきそうな雰囲気でした。
雨もジトジト降っていて、とても寒い中、潜航作業がおこなわれました。夕日もきょうは見ることはできませんでした。
潜航研究者の 1日 第三話
ガタガタガタ・・・
私たちを乗せた「しんかい6500」が後ろへと揺れながら動いてゆく。
台車ごと母船にガッチリと固定されていた拘束具が解かれ、潜水船を吊り上げるために格納庫から後部デッキへ台車ごと運び出される。
やっぱり乗っているものが動き出すと、雰囲気がかなり変わる。
自分のいる場所が“機械だらけの丸い球の中”から“乗物に乗っている”という実感が湧いてくる。
「停止!潜水船ラッシングせよ!」
船外スピーカーからのチーフオフィサーの声が聞こえる。
「よこすか」乗組員が一斉に後部デッキに移った 6Kに取り付き台車を船と固定する。
その間、船内ではパイロットとコパイロットはチェックリストと赤鉛筆で機械やスイッチの設定確認をおこなっている。
私にはまったくわからない機械と単語が二人の間で交わされる。
チェックが進むごとに異常がないことが解るが、それ以上はわからない。
『もう死ぬも生きるも二人のパイロットに懸っているのだなぁ』
と、ちらっと思ったりするけれど、パイロットの落ち着いているようすや明確な会話で不安や怖いといった感じは全然しない。
それより気になるのは海底での作業内容ばかりだ。
『着底する前のキャニスターの水を入れ替えて、着底後はボトルを 2番にして、プランクトンを取りつつ西へ移動し、斜面にある程度近づいたらマーカーを設置してトラップを仕掛ける。それからバクテリアマットが見えたら・・・ 』
潜航者の使命として、研究者みんなが必要とするデータを取って帰って来なくてはならない。
「あ!それやるの忘れちゃった~。テヘヘ」
じゃ当然済まされない。
そんな心配をしていると、天井の方で誰かが歩いている気配がする。
もう一度橋が 6Kにかけられ、6Kチームが最も重要な作業をしにやって来たのだ。
そう、ハッチを閉じるのだ。
ハッチの蓋と接する部分の汚れがウェスで入念にふき取られる。その時、副司令の千葉さんが来ているようで、声がした。
「なんか黒くなってるね~、久しぶりに見たけど。2Kもこうなったっけ?」
『黒くなってる!?何が?大丈夫なのそれは?』
わからない分、ちょっと不安になる。
『まあパイロットが慌てていないので大丈夫なんだろう・・・ おそらく。』
なんて思っているうちにハッチが閉じられていく。中と外で支えながらゆっくり慎重に閉められていく。
ふたが閉まり、最後に締め付けるのは、中のパイロットの仕事。
まさに“潜水船のハッチ”という感じのハンドルが付いていて、これをパイロットの大野さんがゆっくり丁寧に回して閉めてゆく。
「 1、2、3・・・ と半、よし・・・」
ふたが閉まると外の雑音が聞こえなくなる。
今まで響いていた船の音や船外マイクの声が聞こえなくなり、船内は突然静まり返る。
『お!閉まった。急に静かになったぜ。いよいよだな!』
なんて一人で興奮している間も、パイロット両名はテキパキと作業をおこなう。
ふたが閉められるとパイロットが何やら測りだす。ハッチと耐圧穀の高さの差を計っているのだ。
数値が読み上げられるけれども、それが正常なのかは私には全くわからない。私は顔色を窺って異常がないことを確認する。
『う~ん、一回測り直していたようだけど大丈夫のようだ。・・・ おそらく』
その後、上でガチャガチャ音がし始める。6Kを吊り上げるための綱の金具が取り付けられているのだろう。
「よこすか」からの見送りだけは何度もしているから、何をしているのか想像はできる。
「ホイスト巻き取り!」
小さく聞こえると、潜水船がぐらっと動き、少しフラフラっとしたかと思ったうと、すぐに収まる。“Aフレーム”と固定金具で連結したのだ。
“Aフレーム”は船尾についている青い大きな神社の鳥居みたいな形のクレーンだ。ここから 2本の綱が垂れていて、6Kとその綱を金具で留め、吊りあげてAフレームに連結する。こういった作業なのだ。
「Aフレーム振り出しスロー!」
慌てて窓に顔をつけて外を覗くと、観覧車のようにだんだん景色が遠ざかっていくようすが見える。
研究者のみんなが手を振って送り出してくれる。
私も小さい窓から手を振り返す。
潜水船の窓は小さい。両手で親指と中指で円を作ると、だいたいそれが窓の大きさだ。
でも、外からはバッチリ見えているから、ちゃんと手を振って答える!
そしてどんどん下がっていく。普段見えない「よこすか」のお尻が見え出す。
「固定金具、脱!」
「ホイスト巻き出し!」
ふわっとして、ユラユラ、ドブ~ン。
窓に水しぶきが当たり、水中が見え出す!
とたんに、船内はグラングラン揺れ出す。
水に潜ってこその6K、水面じゃアヒルのおもちゃのようにプカプカしてしまうのだ。
その時、外では“スイマー”と呼ばれる人たちが作業艇から海へ飛び込み、6Kへ向かって泳いでいる頃だ。
水温 10℃そこそこのこの海域を、波にもまれつつ 6Kにたどりつくと天井によじ登る。
6Kと繋がっている綱を外すためだ。最後の取り外しは手作業なのだ。
スイマーはテキパキと金具を外してゆき再び海へ飛び込む。
今度は作業艇に向かって一生懸命泳ぎ、這い上がるやいなや、バァァァァーっとエンジン音を響かせ作業艇は遠ざかってゆく。
この一連の作業は 6Kの中からは感じ取れない。
作業終了を知らせる通信が来ると、いよいよ潜航だ。
ベントが開かれ、浮力を得るための空気がプシャー!っと抜かれてゆく。
6Kはとたんに落着きを取り戻す。もう水の中だ。さっきとは安定感が全然違う。ビタッと動かなくなる。
安定しすぎて全く潜っている感覚がない。
窓を見ると景色が上へ上へと流れていくのが見え、自分が沈んでいっていることがやっとわかる。
パイロット両名はマダマダ確認作業を進めている。
さて、これから海底までは 1時間ほどかかる。海底ではどんなことが待ち受けているのだろう・・・ 。期待と不安を抱きつつ、足がしびれない体制を探す。
やっぱり狭い・・・
つづく
[きょうの写真]
上/Aフレームからの振り出し
下/スイマーの方々
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)YK08-07 「よこすか/しんかい6500」による北海道奥尻島沖 深海生物調査航海
新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。