2008年06月10日

北海道奥尻島沖(10)久々の潜航中止

  • 期間:2008年5月29日〜6月19日
  • 場所:北海道奥尻島沖
  • 目的:深海生物 調査採集
  • 担当:根本


こんにちは!こちらでは夕方は息が白くなるほど肌寒いです。そのせいか、船内では風邪が流行っています。
船員の方や6Kチームの方、学生さん、研究者も風邪にかかっています。そして私もやられちゃいました・・・ 。
熱と喉と頭痛で半日やられていましたが一晩半ガッツリ寝たのと栄養満点の御飯のおかげでもう大丈夫です!
船には医者はいませんが、治療などの訓練を受けた船員さんがいらっしゃって、調子が悪いとすぐに薬を渡してくれます。
わたしも「風邪っぽいのですが・・・」と言ったら「大丈夫ですか!?熱を測りましょうか?」と体温計や薬をドンドン出してきてくれました。船の方はとても優しいです。

きょうは、霧も波もあり潜航中止。
きょう、あすやると驚異の10連続潜航とるところでした。通常は数回潜って「しんかい6500」の整備日が入るのでその日の潜航はありません。この時にたまったデータを整理したり休んだりできるのですが、天候の関係で休まず連続で潜航することも少なくありません。
今回生物の調査がメインではないので、私は大丈夫なのですが、化学者の方、通称“バケ屋さん”は凄まじく忙しそうです。
潜航するたびに、海底から採集してきた泥や水を鮮度が良いうちに船上での処理や実験などしなくちゃいけません。なので、ほぼ毎日徹夜でめちゃくちゃ頑張っています!
今回の学生さんは修士になりたてで、しかも船にも不慣れ、それに担当教員が不在ですのでかなり大変そうです・・・ 。その中、10連ちゃんはヤバいです。
潜航中止はとっても困るけれども、こんな時はいい休みにもなります。
私も生物の航海で覚えがあります・・・ 。
そのときは正直『あぁ・・・ たすかった、このままでは死んでしまう・・・ 』と潜航中止を神の恵みとありがたがったこともありました・・・ 。

きょう、私はサンプルリストの作成と撮りためた写真の整理をしていました。ちなみに何枚撮ったか数えてみたら3769枚撮っていました。
そのうち深海生物の写真が1196枚。
しかし!良い写真は少ないですね・・・ 、いや~写真は奥が深い。まあ、デジカメですのでね!数撮って良いものが数枚残ればラッキーです!あすも撮りまくりです。


潜航研究者の1日 第四話

「よこすか−しんかい、そちらの感明いかが!」
「しんかい−よこすか、こちらの感明良好、そちらの感明いかが!」
「感明良好。これより潜航する」

そして、6Kはすーっと静かに潜航してゆく。

「よこすか」と「しんかい6500」(通称6K)は音波でいつでも交信ができる。
潜航中、母船は常に6Kの近くにいるように船を動かし、完璧なバックアップ態勢をとっている。それなので3人だけで心細いと思う事は全然ない。

パイロットの二人は機器のチェックや設定でまだ忙しそうだ。私は6Kの左舷がわの窓、いわゆる"研究者用の窓"に顔をくっつけて外を見る。まだまだ明るい。
それにしても、全然揺れない。こんなに揺れない乗り物は他には無いような気がする。
けれどあっという間に水深50m。潜る速度は案外速い。外はまだ太陽の光が届いていてようすを見ることができる。

ちなみに6Kの潜航時、ライトは消している。それは節電のためだ。
6Kは電池で動いている。ちなみにその電池、携帯電話の電池と同じリチウムイオン電池を使っているんだそうだ。この電池だけで8時間動き回らなくてはいけないので電気の無駄遣いダメなのだ。
そうこうしている間に、もう100m。ここまで来るとかなり暗い。でも少し光が届いている。まるで太陽が沈んでからしばらくした空の様な感じ。夜になりきらない薄明るい感じが似ている。さらに潜航はどんどん続く。
パイロットの二人も一段落したようなので、とりあえず窓から離れた。

あとは1時間ほど海底まで沈んで行くのみなので、この時間は3人で調査の話や雑談をしながら過ごす。
「水族館て何時から始まるんですか?」とか「実家はどちらの方ですか?」なんて聞かれたり、こちらから「日本海にはよく潜るんですか?」とか「今までの潜航でどこが印象に残ってますか?」なんて聞いたり、たわいもない会話をしている。
何気ないけれど、こんな時間が結構重要なのだ。自分の緊張も解けるし、パイロットの方がどんな感じの方なのかが解る大切な時間なのだ。
特に私のような初心者には気を使ってくださっていろいろ話しかけてくれているのだと思う。

会話の間にふと窓の外を見るともう真っ暗だ。
水深計の値を見ると290mを過ぎている。いつのまにか深海の入口を突破してしまっていたのだ。

ソロソロと窓に近づいて、手のひらで輪っかを作って、船内の光が目に入らないようにして顔とガラスの間を覆って外を見てみる。そうすると、チラ、チラ、チララと粒が上にすっ飛んで行くのが見える。

発光生物だ!

沈んでいく巨大な6Kに驚いたのか、小さなプランクトンが光を放つのだ。
発行生物なんてすごく珍しい感じがするけれど、窓の外には星空みたいにたくさん光っている。
潜航しているので、星はみんな流れ星になっている。上に登る流れ星。流れ星とは違って真っ直ぐに上がらず、6Kが書き分けた水に沿ってクネクネ上がっていく。
数もまるでマシンガンで撃っているようだ。
すごい・・・ 。
できれば船の中も真っ暗にして見てみたいと思うけど・・・ 、無理だよね・・・ 。きっと。

プランクトンの流れ星はいつまで見ていても飽きない。でも体が苦しくなってくるので程々に・・・ 。
窓が下の方に付いているので、体をかがめて覗かなくちゃならないので結構大変なのだ・・・ 。

そのあとは色んな話をしながらドンドン沈んでいく。
ちなみに今回は3000mなので、話をしていれば1時間くらい経つけれども、6500mにもなると2時間以上も潜航と浮上の両方に時間がかかってしまう。
その時は2時間話をするのも大変なので、映画を見て過ごしたりするそうだ。ちょうど1本見ると到着といった感じらしい。
そのほかには音楽をかける人もいるらしい。
以前、外国の方が乗ってきた時にCDをかけたそうなのだけれど、尺八の演奏のCDだったそうだ。
『日本人はこう言うのが好きに違いない!』
とおそらく気を使っての事だと思う。
丸い球の中で尺八の音が響く・・・ 。かなり神妙な空気になっていたのではないでしょうか。
ちょっとやってみたい気もする。

船内は深度が増すにつれて冷えてくる。水深700mになると水温は1℃を切っている。日本海は他の海域に比べ水温が低い。
「けっこう寒いね」
パイロットの大野さんが言う。
実は私は寒くない。たんまり着こんで来た上に潜航服を着ているので大丈夫!靴下も3枚はいている。今のところ全然問題ない。
でも耐圧穀の金地が直接出ているところには結露が付いていて、近づくと冷気が伝わってくる。さらに深くなると水温も冷えてくるのだろう。油断はできない!

そんなことを思っているところに、コパイロットの齋藤さんが「どうぞ」と飴をくれた。
飴を舐めつつ、話をしつつ、窓を見つつ着底点めがけて潜航は続く。

つづく

[きょうの写真]
上/ベント開
下/潜航開始!

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC

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海洋研究開発機構(JAMSTEC)YK08-07 「よこすか/しんかい6500」による北海道奥尻島沖 深海生物調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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