きょうも北伊平屋海丘で潜航がありました。
きのう同様、おびただしい数のゴエモンコシオリエビやオハラエビ、貝類、ゴカイ類などを採集します。
ところで、当たり前ですが、ハイパーが一度に持って浮上できるサンプルの量は限られています。
また、研究者によって、その採りかた(採集道具や方法を運航チームの方に指示します)が違います。
少しずつ大事に大事に採る方もいれば、ごっそり採れるだけ採る方もいます。
さて、今回はご存知、元えのすいトリーターの三宅さん(現北里大学講師)です。
三宅さんのハイパーの使い方は「コロンブスの卵的発想」と「飼育者的発想」がブレンドされた独特のスタイルで、普通の研究者とは「明らかに違って」います。
今回の潜航を例にとってみますと、まず、全部で6つ装備できる採集ビンを5つしか装備しません・・・ さらにその1ビンにはアイスノンがぎっしり詰め込んであるのです・・・ 。
使えるビンは4つだけ?
普通に考えると2ビン分生物が採れなくて損なのでは?と思えるのですが、これには実に合理的な理由がありました。
三宅さん、潜航しての4ビン分はデリケートなプランクトンやゴカイ、オハラエビなどを状態よくキープしていきます。
その後で「ビンがないとこ回してください」。
そこはビンとビンの隙間、スペースが広くあいています。
ここで「ゴエモンすってください」。
比較的頑丈な体のゴエモンたちをこのスペースに収めていきます。
意外と広くて、かえってビンを入れないほうがたくさん入っている気がします。
そして次に「水換えして入口をアイスノンにして下さい」。
採集ビンの中を「水換え」する研究者は少ないと思います。飼育者の発想です。
さらに、アイスノン入りのビンで各ビンの入り口を塞げるため、生物を冷たい水のままで陸揚げすることができるわけです。
これをしないと浮上中にビンの入り口から暖かい表層の水がジャンジャカ入ってきて、高温に弱い生物は死んでしまいます。
揚がってきたビンの水をさわると狙い通りキンキンです。
深海生物を生かして採集する際は、温度と圧力の変化によるダメージが深刻なのですが、この方法で温度をかなり改善したと言え、大変参考になります。
さて、水槽も生物でかなりにぎやかになってきましたが、肝心の「海オタマ」の話がでてきませんね。
外を見ると、きょうで潜航は終わりのはずなのに、ハイパーは運航チームの方たちによって新たな装備をほどこされています。
この後何が起こるのでしょうか?
[きょうの写真]
上/ネットを装備したハイパー
下/採集されたばかりのゴエモンコシオリエビ
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT08-12 「なつしま/ハイパードルフィン」による沖縄トラフ 深海生物調査航海
新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。