2010年04月25日

南西諸島海溝(6)No.6 再び水深1,000m

  • 期間:2010年4月21日~5月5日
  • 場所:南西諸島海溝
  • 目的:深海生物調査
  • 担当:根本


天候も回復してきたので調査再開です!
本日は 2,000mの海域に潜航予定でしたが、漁船の漁と海域が重なってしまったので急遽 1,000mの海域まで移動です。
この調査海域は4月22日に潜航した場所と同じ場所です。
やり残しているミッションをおこないます。

さて、きょうは生物の飼育の話です。
今回は生物を採集する深度にかなりばらつきがあります。各調査海域間で数百メーターの水深差があります。
そこで問題となるのが水圧!ではなくて水温。
水温の変化は多くの生物に対して大きなダメージを与えます。
一方、水圧に影響される生物は、ほとんどが魚です(私の勝手なイメージですが・・・)。
深海トロールなどで上がってくる魚の多くは、体内のガスが膨張して内臓や目が出てしまっています。
今回のような潜水船を使った調査航海では、採集生物はほとんどが無脊椎動物です。
これらの無脊椎動物は、水圧差をものともせず、元気な姿を見せてくれるものが多いのです。
しかしそんなタフな無脊椎動物も水温差には大きく影響されますので、水温管理はとても重要です。
現在乗っているこの海洋調査船「なつしま」には低温室があります。
この室内の温度を約 4℃に設定し、水槽を置くことで深海生物を飼育することができる、とっても画期的なシステムです。
今回は室内に水をためる大きな容器が 1つと水槽が 6つ設置してあり、長期間の航海でも採集生物を細かく分け、低温をキープしながら飼育することができます。
しかし今回は水深 1,000m以深では水温が 4℃、500mでは約 12℃、最も浅い280m付近では18℃と生息環境の水温がかなり違います。
このような場合は、4℃以外の水槽をヒーターで調節します。
しかしヒーターはちょっとした事で事故が起きるので要注意です。狭い低温室で作業をしていると、温度調節のつまみが何かの拍子にずれたり、コンセントが抜けたり、センサーが水から出てしまって気付かなかったり、いろいろとトラブルが起きやすいのです。
全てビニールテープで固定しつつ、注意しトラブルに備えます。

水槽は万全ですが、採集時の水温上昇はなかなか避けられません。
深海底で採集された生物は、ハイパードルフィンに搭載されている容器に入れられて船まで上がってきますが、この容器は保冷機能がないため水深が浅くなるにつれどんどん温度が上昇していってしまいます。
そうなると回収後に、生物をいかに速やかに冷たい水に入れられるかが勝負になります。
この時だけは、飼育の基本である水合わせは一切必要ありません。
やけどの治療のように一気に冷たい水に入れてやります。
すると、死んだように動かなくなっていてもしばらくすると復活する時があります。
そのあとは、徹底的に水槽の水を綺麗に保つように水替えを毎日おこないます。
ろ過装置も取り付けていますが、乗船してから立ち上げた水槽では、ろ過槽にろ過バクテリアも増えておらず水を綺麗に保つことはできません。
船上での飼育は水温管理と水替えがとても重要なのです。

[きょうの写真]
上/水を冷やす桶
下/船内飼育水槽

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC


海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT10-07「なつしま/ハイパードルフィン」による南西諸島海溝深海生物調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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