2015年11月11日

湯河原 キントキダイ乗船採集キントキダイ採集日誌/角張

  • 期間:2015年11月10日
  • 場所:神奈川県 湯河原
  • 目的:乗船採集展示
  • 担当:岩崎・根本・角張


前回10月9日の乗船採集と同じく、湯河原の釣り船「天恵丸」さんにご協力いただき、釣り採集を実施しました。
今回の狙いはキントキダイ。メンバーは角張と岩崎、根本トリーターです。
恥ずかしながら私は釣りの経験がほとんどありませんでした・・・
足手まといになるのではないか・・・天気予報も雨に加え強風、無事に出港できるのか・・・多くの不安を抱えながら当日を迎えました。

午前6時30分“えのすい”を出発。
風はそこまで吹いていないものの、今にも雨が降りだしそうな空模様。大丈夫だろうか・・・
到着してみると、真鶴半島が壁になっているおかげか、予想していたよりも風は吹いていなかったので一安心です。

午前8時いよいよ出港。
海上は、動きの遅い低気圧と寒冷前線通過の影響でうねりに加えて北寄りの強風に見舞われる時化模様。防風壁になっていた真鶴半島を越えるとうねりと風はさらに強まりました。
「この荒れ具合はキンメダイ採集の時と同じくらいかもしれない」
と、2月に大荒れの中実施したキンメダイ採集を経験した岩崎さん。
本当に釣りなどできるのであろうか・・・再び不安と、うねりを越える度に胃の辺りがフワッと浮く感覚(ジェットコースターに乗ったときのような感じ)に襲われます・・・。

なんとかポイントに辿り着き、キントキダイ釣り開始。
ですが、船長さんが操舵から少しでも離れてしまうと、船がどんどん流されてしまうような荒れ模様。下手に釣り糸をおろせば同乗者同士の仕掛けが絡んでしまう可能性が高い状況、また先程書いたように釣り初心者の私は船長さんに一から教えて頂きながらの釣りの予定でしたので記録係にまわることになりました。戦力にならずすみませんでした・・・

しかし!落ち込んでいる場合ではありません!次の機会の為にいろいろなことをしっかり吸収せねば…!
先輩方の釣りを見守ります。
餌はオキアミ、イカです。餌を付け、電動リールを使い水深 70~ 80mまでおろしていきます。


キントキダイの当たりは少しわかりにくいようで、2人とも探り探りのようす・・・
しばらくして、「・・・あー、絡んじゃってるよ」と船長さん。
どうやら岩崎さんと根本さんの仕掛けが絡んでしまったようです。

この荒れ模様に加えて仕掛けの絡み・・・船上には諦めの雰囲気が漂います・・・
重たい空気の中仕掛けをほどいていくと・・・根本さんの竿に何かがかかっているようです!
そっと引き上げると、朱色のキントキダイが現れました!
大きな眼にピンと張った背びれや尻びれ、上向きの口はなんとも迫力がありますが、鮮やかな朱色は思わずほれぼれとします。
確実にキントキダイはいる!船上に希望の光が差しました。魚群探知機にもしっかりと反応があります。
餌をイカだけに切り替え、続行です。
入れ食いとはいきませんがポツポツと釣り上がります。浮き袋は膨らんでおらず、針を飲み込んだ状態でしたが、針を外して船内の生けすへ入れると泳ぎ出しました。魚へのダメージも少なそうです。
これならうまく生かして持ち帰ることができそうだ…!


私も当たりが来た竿を持たせてもらいましたが、糸を巻き上げて徐々に魚影が見えて釣り上げる瞬間は何ともいえない感動を感じました。


ただ釣るだけではなくしっかりと生かして持ち帰るのが釣り採集。肝に銘じなければ。

午前10時頃、キントキダイの反応が鈍くなってきたようなのでポイントを変え、ソコイトヨリ釣りに変更することになりました。
船長さん曰く、キントキダイは午前7~8時頃、日が昇って明るくなってきてしまうと反応が鈍くなり、釣りにくくなるそうです。今回のように午前9時過ぎでも釣れていたのは珍しいとのこと。どんよりとした空模様が功を奏したのかもしれません。

続いてソコイトヨリ釣り開始です。
餌や仕掛けについては前回の鈴木さんの採集日誌で詳しく書かれていますので割愛させていただきます…。
さあ、キントキダイ釣りでは戦力外だった私も晴れてスタメン入りです!(笑)
船長さんに教えていただきながら重りと餌の付いた針を水深30~ 40mへとおろしていきます。ご丁寧に指導していただきありがとうございます!
「ググッ!」さっそく当たりが!
慎重に巻き上げると、きれいなピンク色のソコイトヨリです!!
釣り上げると前回同様浮き袋が膨らんでしまっています。
素早く岩崎さん、根本さんへと受け渡し注射器で空気を抜いてもらいます。処置が上手くいかなかったようで残念ながらうまく生かすことができませんでした・・・揺れる船上での処置の難しさを思い知ります。
次に岩崎さんが釣り上げたソコイトヨリは何とか処置でき、フラフラとしてはいますが生けすの中で泳いでいます。なんとか“えのすい”まで持ってくれと祈るばかりです。


その後も続行しましたが、なかなか狙いのイトヨリの当たりが来ません。
釣り上がってくるのはソウダガツオ、サバ、キダイなど。うーん、どうしたものか。
船長さんによると、水温低下にともなって、ソコイトヨリは深場に移動しているとのこと。
また、海況の影響や時間で入ることができない漁場があったこと、誘引用のコマセアミを狙うサバフグの襲来もあり、残念ながら前回10月採集ほどの成果を得ることはできませんでした。

後ろ髪をひかれる思いでお昼過ぎに納竿、帰港します。
さて、次は水族館への輸送です。ここからが本当の勝負といっても過言ではありません。
生かした状態でしっかりと持ち帰ってこその採集です。
まずは船内の生けすからトラックのタンクへと移動させます。
タンク内の海水をペットボトル氷で生けす内の水温と合わせ、準備万端です。
傷などつかぬように慎重に、そしてなるべく素早く、魚をすくいあげて運びます。
移動させたらタンク内に擦り傷用の薬を入れ、積み荷をロープで固定し、船長さんにお礼を伝えて“えのすい”へ出発です。


14時45分ごろ“えのすい”着。
帰りを待ってくれていたトリーターたちに協力してもらい、予備水槽に移動させます。
目立った傷もなく元気そうです!釣り上げた5尾すべて無事です!



一方、1尾のみでしたが生かすことのできたソコイトヨリは呼吸も荒く、相変わらずフラフラとしていました・・・新鮮な海水を口のあたりにかけ流してあげて一晩ようすを見たところ、なんとか持ち直しました。予備水槽でも落ち着いていてほっと一安心です。

あとで調べたところ、今回採集できたのは「チカメキントキ」という種類でした。
現在は餌も問題なく食べるようになったので、近々みなさんにお見せできると思います。私も展示水槽を泳ぐ姿を見るのが楽しみです。

長々と書いてしまい、すみません(汗)
最後に、悪天候の中、今回もたくさんお世話になりました天恵丸さん本当にありがとうございました!!

太平洋

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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