2017年08月19日

相模川カニ類調査(3)相模川に新顔登場か?

  • 期間:2017年8月19日(土)
  • 場所:相模川
  • 目的:半水棲カニ類の生息状況の把握
  • 担当:伊藤
前々回より下流側のヨシ原と砂質干潟前々回より下流側のヨシ原と砂質干潟


みなさんこんにちは。
前回の続きです。今度は相模川のかなり下流の方へ行ってみました。
前々回ハマガニを見つけたヨシ原に隣接しており、小さい砂質干潟と、一部に人工護岸、崩れた土塊と小石からなる転石地帯があります。
さて、ハマガニ、タイワンヒライソモドキに続くお目当ての種は、干潟のカニとしてはあまりに有名なこいつです。

コメツキガニ
相模川の干潟はそれなりに広いのですが、砂泥地に穴を掘って暮らす、いわゆるスナガニ類(スナガニ上科)はほとんど見られません。
干潟上をひたすら歩き回って、やっとそれらしき小さな穴を見つけました。
さらに、入口には砂団子がくずれたらしき砂の塊が落ちています。


特徴的なコメツキガニの巣穴


立派なサイズのコメツキガニ

穴の前で待っていると、穴の口から脚が出てきました。
います。素早く近付き、穴の主をキャッチです。
久々の相模川産コメツキガニです。ちゃんとまだ相模川にいてくれました。
ただ、以前より巣穴の数は少なかったのが気がかりです。
未だ希少なカニであることが窺われました。

最干時刻を過ぎ、だいぶ潮が満ちてきました。最後に、水際から数m離れたヨシ原を見ていきます。
底質は固めの土で、巣穴らしき穴が開いています。
たくさんいるカニのほとんどはこちらでもクロベンケイガニとアカテガニですが、走り去るそれらの中から、直感的に違和感のある個体をつかまえてはチェックしていきます。


大きくて全身真っ赤に熟れたアカテガニ

小さめのアシハラガニは要チェック。よく似た別種が混じっている可能性があります。
小さなハマガニがいました。かわいいです。


まだ小さなハマガニ

そして、これは!初めて見るカニです。
背中はカクベンケイガニのようですが、鋏の先っちょが赤くて、違和感が強いです。
まさかのユビアカベンケイガニの登場です。
神奈川県では珍しい種で、古くは昭和天皇の手によって相模湾から得られていますが、その後は長らく記録が途絶えており、近年になって三浦半島南部の小網代や江奈湾から再記録された注目すべき珍種です。
相模川からは初記録だと思われ、微妙に本種の北限記録を更新することになるでしょうか。


相模川初記録の珍種ユビアカベンケイガニ

今回紹介してきたカニたちは、隠れる性質が強く、水族館で展示するのが難しい仲間たちですが、せっかくなので少し工夫をして展示してみることにしました。
相模湾キッズ水槽で、タイワンヒライソモドキを小さなケースに入れた状態で、下から鏡で覗けるように設えて展示しています。
小さいですが、マニアの方必見です。ぜひ見に来てくださいね。



おまけ(閲覧注意!)。
這いつくばってふと上を見ると、木にザトウムシがわっさり。
苦手な方は見ないでください。
勇気がある方、ゾッと涼しくなりたい方は、自己責任でどうぞ。


それではまた、お会いいたしましょう。

相模湾ゾーン

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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