2018年02月28日

東京湾干潟調査極寒の泥地に眠る生き物に会う

  • 期間:2018年2月28日(水)
  • 場所:東京湾
  • 目的:冬眠中の干潟動物の生息状況の把握
  • 担当:伊藤


みなさんこんにちは。
今回は相模湾から少し離れ、東京湾に面した干潟に出向きました。
この時期は猟期が終わり、安全にやぶ漕ぎができるようになるのです。
朝、暗いうちに出発して、スイスイと高速道路を進み、7時前に現場到着。
現場は東京湾に面した某干潟。一応場所は伏せていますが、この後登場する生き物から、分かっちゃうでしょうね。

あたり一面ヨシだらけ。アシとも呼ばれるイネ科植物で、日本では寒い冬に地上部が枯れていますが、地下茎と根は生きており、春から夏にかけて猛烈な勢いで生育します。
一見すると生命感のない風景ですが、この時期だからこそ見つけやすい種というのがあったりします。

その一、珍種クシテガニ。


相模湾では見たことがありません。
前回の日誌に登場したユビアカベンケイガニとよく似ていますが、より大きくなり、オオユビアカベンケイガニの別名があります。
ハサミの上の凹凸が大きくて、クシに見立てられています。
暖かい時期であれば、素早くヨシの隙間へと逃げ込むのでしょうが、今はほぼ冬眠中で、簡単に手に取ることができます。実にかっこいい姿です。

その二、ウモレベンケイガニ。

以前、展示したことがあり、実は現在も干潟水槽に潜んでいる可能性があります。
その名の通り、普段は泥にめり込んだ流木の下などに埋もれて暮らしていますので、展示するのが難儀な種です。
現在、相模湾キッズ水槽において、別のカニで「隠れたところをお腹側から見ていただく」展示を試しています。
いつか本種で試したいですが、本種は軟らかい泥がないと調子を崩すようなので、もう一工夫しないとなりません。そこまでしてでも、お見せしたい魅力があります。

その三、キイロホソゴミムシ。

世界中で、相模湾から外房にかけての限られた地域、しかも沿岸部のみに生息する珍虫です。
大好きなこの小さな虫に、今年も出会えました。
この時期は落ち葉の下などで冬眠していますが、もぞもぞと動けます。
潮の干満を受ける沿岸のヨシ原では、溺れないために寒くても動ける必要があるのかも知れません。
不定期ではありますが、ちょこちょこ生態を調べてみたりもしており、一昨年、本種の飼育を通して、餌の候補を一つ突き止めました[関東地方固有種キイロホソゴミムシ(コウチュウ目オサムシ科)によるトビイロウンカ(カメムシ目ウンカ科)捕食の初記録)]。

最後おまけ

水辺の泥に点々と続く大きな五本指の足跡・・・
まあ、アライグマかハクビシンなのでしょうが、ロマンです。
当館ではついにコツメカワウソの展示が始まっています。隠れ“ニホンカワウソ”ファンとしては、大注目です。
別種で飼育下個体ではありますが、新しい環境への馴致が進んでいない今の方がむしろ、野生の行動に近い挙動が見られるかも知れません。
そういった意味では、野生カワウソ好き?の方にもおすすめの時期かもです。
魚でもそうですが、飼育下での行動観察から、野外の生態を推察できたら面白いかな、と常々思っています。

最後は展示の話になりました。干潟を始め、身近な水辺の観察をこれからも続けていきます。
長文にお付き合いいただきましてありがとうございました。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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