2020年01月21日

鹿児島湾及び周辺海域調査航海(7)航海日誌7日目

  • 期間:2020年1月15日(水)~1月22日(水)
  • 場所:鹿児島湾及び周辺海域
  • 目的:コノハエビはポンペイワームを超える? ~鹿児島熱水噴出域産コノハエビ類の高温耐性に関する研究
  • 担当:八巻


調査日4日目、タギリコノハエビ
航海7日目です。ついきのう乗船したような気がしますが、本航海もきょうとあしたを残すのみとなってしまいました。あしたの朝には下船することになりますので、実際はきょうが最終日といっても過言ではありません。
航海のたびに思いますが、乗船中は本当にあっという間で、時間が経つのがとても早いです。
きょうの調査海域はきのうに引き続きハオリムシサイト。
本航海の一番の目的であるタギリコノハエビを研究に必要な数採取するため、きのうしかけたベイトトラップを回収することが潜航の主目的です。

タギリコノハエビは、コノハエビのなかまに属する小型甲殻類で、若尊火口で採取されたサンプルをもとに昨年新種として記載されたばかりの生物です。


タギリコノハエビ

コノハエビのなかまは浅海から深海まで広く分布している一方で、多くの種は大きさ 5mmから 1cmほどと、とても小さく、一般への認知度も決して高くありません。
タギリコノハエビも大きくて 1cmほどですが、先日の日誌でもご紹介したとおり、若尊火口の熱水噴出域にあるチムニーの隙間からも発見されている、変わった生態を有する種です。
若尊火口だけでなく、ハオリムシサイトにも同種が生息していることが知られているので、今回はそれをねらっています。

きょうの潜航ではベイトトラップの回収はもちろん、きのう同様スラープガンでの採取もおこないました。
最終潜航ということもあり、タギリコノハエビが予定通り採取できるか少し不安もありましたが・・・
いざサンプルを受け取ると、すぐにタギリコノハエビと思われる姿を確認できました!
とても小さな生物なので、見つけるのが大変と思われるかもしれませんが、この生物は一度水面に触れるとそのまま水面にトラップされてしまう傾向があり、水面をくるくる回って泳いでいるのでとても見つけやすいのです。


赤丸:水面をくるくる回って泳いでいるタギリコノハエビ

このような水面に浮いてしまう小さな生物は、ピンセットでつまんだりスポイトで吸い取ったりするのが案外難しいのです。そこで意外と役に立つのが、上の写真にも写っている灰汁とりに使う金網です。
調査や飼育ではこのように日用品が役に立つ場面がありますので、日々の買い物でもつい使えるものがないか目を光らせてしまいがちです!

さて、本航海もあとはきょうのサンプルのソーティングとあすの下船の準備のみとなりましたので、航海日誌も今回で最後とします。
名残惜しくも満足感の入り混じる不思議な気持ちです。

予定していた生物を全て採取することができたのも、ひとえに、新青丸の船長はじめ乗組員の方々と、ハイパードルフィンの運航チームの方々が調査の成功のため全力を尽くしてくださったおかげです。
また、ご一緒した研究者の方々からは多くのことを学ばせていただきました。
この場を借りて、感謝申しあげます。本当にありがとうございました。



なお、今回採取した生物は順次公開していく予定です。
タギリコノハエビはとても小さいのでどのように公開していくか難しいところですが、どうにかみなさんに見てもらうことができるようにしていきたいと思っています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-20-2 新青丸/ハイパードルフィン 「コノハエビはポンペイワームを超える? ~鹿児島熱水噴出域産コノハエビ類の高温耐性に関する研究」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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