2020年07月09日

東京湾奥(2)カニの楽園を見てきました(岩場と草地編)

  • 期間:2020年7月9日(木)
  • 場所:東京湾奥
  • 目的:干潟のカニ類の調査
  • 担当:伊藤
転石と草地。転石と草地。


みなさま こんにちは。
前回の続きです。
干潟の周りには、草地や岩場、打ち上げられた大量の流木など、変化に富む環境があります。
実は私、砂泥地よりこちらの方に興味があります。マニアックな話になりますがお付き合いください。

先ずは岩場。
場所によってはむき出しの岩盤がそそり出る「汽水の岩礁」みたいなところもありますが、当地は砂の上に岩が転がっている転石地帯です。
ひっくり返せそうな石をひっくり返していくと、大量のカニが慌てふためき走り去ります。
多くはおなじみのイソガニやケフサイソガニです。
ここで「どうせ全部イソガニかぁ」とあきらめてはいけません。
目を凝らしていると、たまに「あれっ」と思う存在に気付けます。


フタバカクガニ。
いかつさに反して素早さはカニ界トップクラス

まず、明らかにイソガニ類より素早い存在に気付きます。
スタスタ走り続けるのではなく、瞬間的なダッシュでジグザグに視界から消え去る感じ!
何とか捕らえてみるとフタバカクガニ。
私の大好きなカニで、沖縄のマングローブではメジャーな種です。
関東地方では少し前まではかなりレアな種でしたが、近年よく目にするようになりました。
出会えた時の嬉しさは、魚好きが「関東の海で南国のカラフルな魚を見つけた」というのに似ています。


とびきりカラフルなアカテガニ


無骨なクロベンケイガニ

転石地帯よりやや高い部分にはヨシなどのイネ科植物が密に生え、流木が大量に引っかかっています。
このあたりをかき分けて、地面あたりを丹念に探すと、アカテガニやクロベンケイガニがいました。
相模川ではメジャーな 2種ですが、当地では影が薄い・・・ 。
それだけ他の種が多いわけです。


ベンケイ界きっての日陰者ウモレベンケイガニ


今回の目玉?クシテガニ

その他にも、絶妙な環境を選んで暮らしている種もいます。
泥地から草地に移行するあたり、草がぽつぽつ生えているも定期的に洗われてゴミや落ち葉があまりないような環境。
また、少しこんもりと高くなっていて、セイタカアワダチソウが生え始めるような環境。
そんなところで見られる多くは、前編で紹介したアシハラガニなのですが、その中に、面白い種類が混じります。

まずはクシテガニです。
私は当地でしか出会ったことがありません。今回再会したかった筆頭でもあります。
動きはフタバカクガニのように素早いですが、割と「隠れたつもり」になってうずくまるので、いくつか手に取ることができました。
ゴッテリしたボディと濃いオレンジ色のハサミが素敵です。

もう一つ、ウモレベンケイガニ。
本種は、干潟に打ち上げられ、泥にべっとりと張り付いている板切れや衣服、雑誌の裏に潜んでいるイメージです。
今回、そういった「ウモレスポット」が少なかったのですが、クシテガニを追ってはいつくばっていたら運よく出会うことができました。


打ち上げられた大量のアマモ類

今回、当地を訪れたのは2年ぶりでしたが、短時間でこれだけの種類に出会えたことは幸運でした。
最後に、ちょっと驚いたのが、大量に打ち上げられたアマモ類の塊でした。
すさまじい量です。
相模湾では生育地が年々減っている海草ですが、これを見て、東京湾のアマモの豊富さを伺うことができました。
打ち上げられている多くは葉の部分のみで、根茎がありません。
アマモの根茎は地中にあり、いわばそちらが本体です。
この後、海が穏やかになり、またぐんぐん伸びることを信じつつ、当地を後にしました。

当地で見られたのと同じ種類をいくつか、当館 相模湾ゾーンの「干潟水槽」でもご覧いただけますので、密にならないように(特に込み合いやすい水槽なのです)、ご覧ください。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

RSS