航海4日目です。船での暮らしも慣れてきたように思います。
きのうはひどい縦揺れで、体が宙を舞っているかのような感覚になりました。
今朝、その揺れと同じくらい驚いたことがあります。
午前 5時30分のことです。私の目覚まし時計が鳴ったところで、同じ部屋の学生さんが布団に入っていきました。
まさかとは思っていたのですが、食堂へ来てみるとその謎が解けました。
食堂には、毎日の予定や当番が記されたホワイトボードがあるのですが、そこには、こんな書き込みがありました。
どうやら、その学生さんを含む“ベントス組”は、午前5時ごろまで前日のドレッジ調査などのサンプルをソーティングしていたようです。
調査で得たサンプルはその日のうちに整理しないと、あとから混乱してしまうことがあります。
3日目は、うねりの影響もあり作業ができない時間もあったので、作業開始時間が予定より大幅に遅くなってしまったということでした。
このように船の上では、活動時間が大きく変わるという、普段の生活ではあまりないことも起こります。熱心なベントス組のみなさんには、陸に帰ったらとにかくゆっくり休んでほしいなと思います。
さて、きょうの調査のようすをお伝えします!
午前9時半から ORIネットで水深およそ 600m地点で採集をおこないました。
今回の調査では、これまでできるだけ深い場所に生息している生き物を採集すべく、水深 1000mを超えるような場所で調査をおこなっていました。
しかし、深い場所から上がってきた生き物は、長い間プランクトンネットの中で留まることになるので、その間に崩れてしまったり、他の生き物が絡まってしまうことがありました。
そこで、少し水深を浅い場所にすることで、引き上げまでの時間を短くするという作戦をとることになりました。
いざ引き上げてみると・・・
たくさんの魚類やクラゲ類が入っていました。
状態もよく、元気に泳いでいるようすも見られました。作戦は成功したようです!
すばやく丁寧におたまで生き物をすくい、移動用のバケツへいれました。
今回採集した場所の水温はおよそ 10℃と、とても冷たいのでわずかな移動に使う水も、ペットボトル氷などを使って冷やします。
すくったクラゲは、すぐに水槽へ運びます。
今回は、船用の特別なクラゲ水槽を準備していたので、スムーズに搬入することができました。
実はこの時とても どきどき していました。
なぜかというと、元気なクロカムリクラゲが3個体もいたのです!
クロカムリクラゲは、生きた状態で採集されることが珍しく、研究もあまり進んでいません。
今回の航海で私が一番出会ってみたい生き物でもありました。
このクラゲは、光の当たらない深海に生息しているので、長い間光が当たると死んでしまうといわれています。
そこで、私が着ていたカッパをかけて、水槽に光がはいらないようにしました。
きょうで調査は終了したので、あすはいよいよ呉へ帰ります。
採集した生き物たちを“えのすい”まで持ち帰り、みなさんにご覧いただけるよう
もうひと頑張りしたいと思います。
それでは!
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
広島大学生物生産学部附属練習船「豊潮丸」(広島大学)での北里大学海洋生命科学部の乗船実習