2022年10月19日

豊潮丸 高知沖生物採集航海(3)
3日目

  • 期間:2022年10月17日(月)~2022年10月21日(土)
  • 場所:高知沖
  • 目的:深海生物の調査採集
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは、八巻です。
渡部トリーターの日誌にもあったように、昨日は大変でした・・・
船には強いと自負していますが、さすがの揺れでしんどかったです 笑
結果的にきのうは予定より早く宿毛に入港することになり、宿毛港で停泊、しっかり休むことができたのは何よりでした。

さて、今朝は8時に出港、海況は予報を見る限りではきのうと大差ないように思えるので・・・ 不安の中調査海域へ向かいました。
しかし着いてみれば、明らかに昨日よりも海況が良いようです。揺れも幾分ましに思えました。

本日の海況本日の海況

本日最初の調査は、約 330mのドレッジです。ドレッジに先立って CTDをおこないました。
CTDは深度別の水質(今回は塩分、水温、DO)を計測する手法で、ワイヤーに取り付けたセンサーを沈めることで観測をおこないます。

CTDセンサーを沈めるCTDセンサーを沈める

観測の結果はリアルタイムでモニタリングすることができます。

CTDのリアルタイムモニタリングCTDのリアルタイムモニタリング

水質はそこにすむ生物相を左右する大きな要因ですから、それを知ることは海洋調査の基本です。

CTDが終わったらドレッジに入ります。
先日と同様に投入、5分ほど曳航し、回収しました。
上がってきた袋から中身を出してみると、先日よりも細かい砂泥のように思えます。

ドレッジから砂を出すドレッジから砂を出す

ただ、大きなイシサンゴ類の骨がたくさん含まれているのが印象的で、同じような海域でも少しずれるだけで底質が変わるということがよく分かりました。

底質に含まれていたイシサンゴ類の骨底質に含まれていたイシサンゴ類の骨

ちなみに、このような本物の海底の砂やガレを手に入れる機会はとても貴重です。
本物のガレは岩石性の砂の他に、硬い骨格や殻を作る生物の死骸からなる生物由来の欠片がたくさん含まれています。

1日目のドレッジで得た砂やガレ1日目のドレッジで得た砂やガレ

深海の底質にはさまざまなものが含まれる深海の底質にはさまざまなものが含まれる

私はこのような本物の海底の砂は、水槽の雰囲気を出すには欠かせない重要なアイテムだと思っていますので、今回捨てられるものをいただき、水槽のレイアウトに活用することにしました!

さて、ドレッジが終わったら本航初登場のそりネットです。

そりネットそりネット

これはドレッジによく似ている底棲生物を採集する道具ですが、ドレッジは積極的に砂ごと採集するのに対し、こちらは返しがついていて、どちらかというと海底をそりで滑らせるように曳航し、砂ではなくそこにいる生き物だけを採集するようなイメージです。

とはいえ、今回は砂がたくさん入っていました・・・。


砂でふくれたそりネットの袋

が、先ほどのドレッジに比べ、オウサマウニ類やカシパン類、ブンブク類など、ウニのなかまを中心に、目に見える大きさの生物がたくさん入っていました。


そりネットで採集した生物

その後、海域を移動してきのう同様のORIネットをおこないました。ORIについてはきのうの渡部トリーターの日誌をご覧ください。

きょうも3時間ほどかけて、水深 600~800mを曳航、採集をおこないました。上がってきたサンプルは、きのうよりも大型のエビ類が多いように思えました。


ORIネットで採集した生物

特に写真中央のオオベニエビ?と思われる大きなエビは見ごたえがありました。
しかし中層でプランクトン生活をしている生物たちは透明なものが多いこと、ただの水に見えても、手を入れてみるとサルパやクラゲ類だらけ。その自然の造形美にはいつも驚かされます。

今回は深海性のクラゲ、ツヅミクラゲモドキを見ることができました。


ツヅミクラゲモドキ

本航ではクラゲのようなプランクトンも飼育できるように、三宅先生がクライゼル水槽を用意してくれました。


船上クライゼル水槽

これは船が揺れても水があふれないように密閉されており、船上での使用に適したつくりになっています。
今回は比較的元気だったウミノミ類やヒオドシエビ?類も一緒に入れてみました。このような浮遊性の生き物は常に泳いでいるので、流れがあった方がよいと思われます。


ウミノミ類


ヒオドシエビ?類

このような小さな生き物を効果的に展示できることが、深海生物展示の幅を大きく広げると思いますので、今後力を入れていきたいポイントです。

ORIが終わった頃には再び風が強くなりはじめ、風と波を避けるために、風の陰になる高知県大月町沖に移動することになりました。移動中はきのう以上にものすごい揺れでした 笑

下りのエレベーターに乗っているかの如くの浮遊感を3時間近く感じながら、ようやく到着。やはり風の陰になる海域は先ほどまでの揺れが、まるで嘘のように治まります。
私はもともとキャンプやボルダリング、ダイビングなど自然の中に身を置くことに楽しみを見出し趣味としていますが、調査航海は文字通り自然を肌身で感じることのできる体験の最たるものだと思います。
海況次第で調査の内容も大きく変わりますし、過酷な環境の中で調査をしなければならないこともあります。
しかし、だからこそ分かることもたくさんありますし、そうしないと分からないことがほとんどです。さらにそんな調査航海でわかることも広大な海のごくごく一部のことです。

航海のたびに、このような逆らえない自然を研究の舞台としている先生方や学生さんたちに畏敬の念を抱かずにはいられません。
また最善を尽くしてくださる調査船の乗組員の方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。
このように人がつながることで自然を相手にできる調査航海に参加できること、改めて幸運なことだと実感します。

風をよける海域へ到着したのが夜 10時前。しかし、午前のサンプルのソーティング、灯火採集と豊潮丸の夜はにぎやかに更けていきます。


ソーティングを続ける広瀬先生と学生さん


灯火採集をする三宅先生と学生さん

きょうの日誌は水平線に沈む夕日をご覧いただいてしめましょう。


水平線に沈む夕日

ではまた あした。


広島大学生物生産学部附属練習船「豊潮丸」(広島大学)での北里大学海洋生命科学部の乗船実習

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

RSS