2022年12月16日

南星丸 錦江湾生物採集航海(1)
1日目(杉村)

  • 期間:2022年12月16日(金)~2022年12月18日(日)
  • 場所:鹿児島沖(錦江湾)
  • 目的:サツマハオリムシ・タギリカクレエビの調査・採集
  • 担当:杉村・八巻・山本


えのすいトリーターの杉村です。
久しぶりの調査航海です。

私は今、鹿児島県鹿児島市の錦江湾(鹿児島湾)に来ています。
今回の調査は、私自身が2017年の12月に、この鹿児島の錦江湾にサツマハオリムシの育成実験用に沈設した鯨骨の回収のためにやってきました。

サツマハオリムシは、口もなければ胃もないというとっても不思議な環形動物(ミミズやゴカイの仲間)です。
体の栄養体という部分に共生しているバクテリアが、錦江湾の海底からしみ出る硫化水素を利用して、生きるためのエネルギーの元を作り出すという生き物で、その生活史はまだまだ謎につつまれているという神秘の深海生物です。

そんなハオリムシですが、これまでの研究で海底に沈んだ鯨骨などに付着することが知られていて、5年前にハオリムシの生態を明らかにするために、鹿児島大学とかごしま水族館の協力を得て、“えのすい”から鯨骨を持ち込んで錦江湾のハオリムシサイトに沈設しました。

・・・ではどうやって、海底に沈設したハオリムシを回収するかというと、“えのすい”の「相模湾の生物相調査」で活躍中の水中ドローンをこの鹿児島県に持ち込んで、引き揚げようと考えているんです。
そのために、過去の研究資料を元にホームセンターに通って、鯨骨回収のための秘密道具を自作しました!!
その秘密道具と水中ドローンを持って、昨日15日に“えのすい”を出発して、大阪からフェリーを乗り継いで、本日鹿児島に到着しました。

鹿児島の志布志港からフェリーを降りてしばらくは錦江湾を目指して大隅半島を横断、そしていよいよ錦江湾へ。
錦江湾を左手に北上し、新城から“まさかり海水浴場”という場所近くの磯場で、なんと野生のイルカたちの群れに出会うことができました!!
10~20頭くらいの群れのようでした。
そして、その群れが何かを磯の浅瀬に追い込んで狩りをしているようでした。
これまで野生のイルカは何度か見たことはありますが、狩りをしているイルカを見るのははじめてでした。
錦江湾の野生イルカの調査をしているかごしま水族館の方に話を聞いてみると、その場所は普段は見かけない場所で、狩りのようすが見られたのはとても珍しいとのことでした。
到着早々ラッキーですね、幸先が良い感じです。

かごしま水族館へ到着した後は、本日の調査を終えた鹿児島大学の練習船“南星丸”が近くの港に帰港してきたので、明日からの調査関連の荷物の積込みをして、水中ドローンと鯨骨回収用具のテストをおこないました。
港のとても静かな場所でのテストでしたが、思っていたよりバランス良くドローンは海中で動いてくれました。
バラストのバランスも良いようで特に大きな調整の必要もなく、鯨骨回収用の秘密道具の方も操作する視界の邪魔にならずに、使えそうです。
明日からのミッションに向けて期待大です!!

まずは明日、沈めた鯨骨が見つかりますように、そしてハオリムシがもっさりと鯨骨に付着していますように。
そして、ハオリムシのほかにも魚やいろいろな生き物に出会えますように。
あとはこれまでのドローン操作術が通用しますように。
不安半分、期待半分ですね。

うまくいくことを信じて、明日を迎えたいと思います。
ではまた明日、笑顔で調査が終了しますように。


鹿児島大学、かごしま水族館との共同研究

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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