2023年03月31日

2022年 ウミガメ類のフィールド調査報告

    “えのすい”では相模湾沿岸における野生動物の状況を知るために、フィールド調査を実施しています。その一環として、ウミガメ類の上陸、産卵、漂着(ストランディング)状況について調べています。

    <ストランディング調査> 
    ストランディング調査では、種と雌雄の判別、標識タグの確認、標準直甲長、標準直甲幅を記録します。現場での病理解剖や個体の回収は、細菌等を飼育個体へ感染させないため、実施しておりません。

    2022年ストランディング記録2022年ストランディング記録

    2022年ストランディングポイント2022年ストランディングポイント


    2022年度のストランディング状況は、当館に連絡のあった件数が21件、現場出動件数が19件、ストランディング調査の実施が17件でした。連絡件数は昨年度より1件減り、ほぼ横ばいとなりました。

    発見したウミガメ類の種別ではアオウミガメ 3件、アカウミガメ13件、アカウミガメとタイマイの交雑種 1件でした。ストランディングの連絡が寄せられたのは、2022年4月13日~12月29日で、最も連絡件数が多かったのが 7月の 6件でした。

    ストランディングの最も多かったアカウミガメの標準直甲長は亜成体~成体に相当する平均71.5cmで、産卵シーズンにあたる 6~ 7月に多く確認されたことから、繁殖個体群の来遊が示唆されます(北太平洋アカウミガメの平均成熟直甲長:85㎝)。
    次いで多く確認されたアオウミガメでは標準直甲長が平均48.4㎝で、未成熟個体のストランディングでした(北太平洋西部個体群アオウミガメの平均成熟直甲長:99㎝)。
    また、生存漂着(ライブストランディング)が 1件確認されました。当館職員が現場到着時、やや衰弱が見られましたが、力強く四肢をばたつかせるようすが見られたため、標識タグを装着し、沖より放流をおこないました。アオウミガメのライブストランディングは2017年以来 5年ぶりです。
    アカウミガメとタイマイの交雑種と思われる個体は、肋甲板の特徴はアカウミガメに準ずるものの、タイマイの特徴である尖った縁甲板が見られました。四肢と頭部が欠損していたものの、上記の特徴から交雑種の可能性が考えられました。

    生存漂着したアオウミガメ生存漂着したアオウミガメ

    アカウミガメとタイマイの交雑種と思われる漂着個体アカウミガメとタイマイの交雑種と思われる漂着個体

    <産卵調査>
    今年度は 1件の上陸情報があり、現場調査を実施しましたが、産卵は確認できませんでした。

    産卵調査のようす産卵調査のようす

    このフィールド調査は地域のみなさまからの通報を元に実施しています。昨年も多くの方々のご協力を賜りました。ここに厚く御礼申し上げます。

    浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

    触ってもいいの?

    どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

    “えのすい”はなにをするの?

    打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
    さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

    生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

    浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

    水族館で救護することはあるの?

    どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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