みなさんは神奈川県に震災で沈んだプラットホームがあることはご存じでしょうか?
私は生まれてからずっと神奈川県で生きてきましたが、恥ずかしながら知りませんでした。そのプラットホームがある場所は小田原市の根府川。
今から 100年前の 1923(大正 12)年 9月 1日に発生した関東大震災により、当時の熱海線(現在の東海道線)根府川駅が、ホームや駅舎ごと、到着した蒸気機関車とともに山津波に飲まれ海中に沈んでしまったのです。被害は非常に大きく、100名以上の方が亡くなっています。
沈んでしまった蒸気機関車は 11年後の 1934年に海中から引き揚げられましたが、ホームなどそのほかの人工物は今もなお相模湾に眠っています。
水中遺跡となった根府川駅が注目を浴び始めたのは近年になってからです。100年も経っているのになぜ今? と思うかもしれませんが、その理由は相模湾の豊かな環境にあったのです。
相模湾はもともと、アラメやカジメなどの海藻が繁茂する海中林でした。そのため遺跡が海藻に埋もれしまいその姿が全くわからない状態となっていたのです。しかし、7~8年前の台風によりそれらの海藻が根こそぎなくなったことで 100年の時を経た今、その全貌が明らかとなったのです。
海中の環境という点からみると、海藻が一切なくなった海というのは生物も育たず寄り付かないため非常に問題のある状態なのですが、その代わりに 100年前の水中遺跡が見られるようになったというのはなんとも皮肉なものですね。
現在は研究者の手も入り、少しずつ当時のものが明らかとなってきています。
さて、前置きが長くなりましたが・・・
私たち“えのすい”は水族館の目の前にある相模湾の姿を少しでもみなさまにお伝えできるよう定期的に潜水などの調査をしています。
歴史的な水中遺跡が眠るこの根府川もまた相模湾です。今回、100年という節目の年であることもあり、江の島以外の相模湾を知るために潜ってきました。
1本目の潜水(水深:平均 8.2m・最大 12.9m、水温 25℃、透視度 3~10m)では駅の石垣、レール、ホームを、2本目の潜水(水深:平均 9.4m・最大 14.8m、水温 24℃、透視度 3~7m)では潜水可能な範囲で一番遠いところに沈んでいる駅の土台を見に行きました。
海は荒れてはいないものの透明度は非常に悪く、横を向くとこんな感じ。
もはや前を泳ぐ人のフィンしか見えません。ちゃんと遺跡見えるかしら・・・?と若干の不安もありながら進んで行くと少しだけ視界が開け、最初の水中遺跡が見えてきました。
さて、次の画像、どちらが 100年前のものかわかりますか?
正解は右の写真です。
水中遺跡の付近には消波ブロックも沈められており、現代の人工物と100年前の人工物が混在している状態となっていますが、研究者によりどれが現代のもので、どれが100年前のものなのかという解明が進められています。
断面があらわになっているものについては特に 100年前のものかどうかがわかりやすくなっており、現在のコンクリートは砂と砂利を混ぜ合わせて作られているのに対し、100年前は砂と玉石(たまいし)が主な原料となっているため、それが区別をする1つの指標となっています。
先ほどの石をアップで見ると玉石があるのがわかります。
ただし、コンクリートの塊が多すぎるため、100年前のコンクリートだとわかったとしてもいったい何に使用されていたコンクリートなのかはいまだほとんど解明されていません。
また、金属に関しては長年の付着物が覆っていても磁石が付着するためある程度容易に発見できます。現在では何に使用されていた金属なのかの解明が進められています。
金属の大きな発見として、当時のレールと思われるものが見つかっています。そして、機関車が走っていたレールではないであろうことも現在ではわかっています。理由としてはレールとしては幅が狭いこと、列車のレールにしては 1本分が短いことなどが挙げられているそうです。そのため、現在確認されているレールは建物を造る際に使用されていたレールではないかという仮説が立てられています。
また、蒸気機関車が沈んでいた証拠として、石炭探しが現在おこなわれています。しかし、100年の月日は長く、今のところ石炭は一つも見つかっていません。その代わりに、なんと火山弾が見つかっているのです!これはこれでこの付近まで火山噴出物が届いた証拠となり、どの山のものか研究者が調べている最中だそうですよ。
※その後の情報により、石炭は軽いため海のような流れの早い場所ではすぐに流されてなくなってしまうのだそうです!知らなかった・・・!
潜水後は陸場の震災遺構の見学をおこないました。
1か所目は山津波の土砂により埋もれた釈迦堂。1656年には目の高さより上に拝むようにお釈迦さまが造られていましたが、100年前の震災の山津波により現在では現在の地面から階段を 15段ほど下った場所にあり、それだけ激しい山津波であったことが伺える場所となっています。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。