きょうの日誌に入る前に、今回の私のメインミッションについて、少し紹介します。
本航海の主たる目的は、薩摩硫黄島の直ぐ側の昭和硫黄島の海底に生息しているタイワンホウキガニの採集調査になりますが、実はその沖海底350m付近では、海底から火山性ガスが湧き出て鹿児島湾でみられるような“たぎり”が確認されています。さらにその場所にはハオリムシの仲間も確認されています(三宅 2020)。
そして、もう少し浅い場所にも火山ガスが湧き出ている“たぎり”が確認されていて、ハオリムシが生息している可能性が考えられます。
そこで、今回の私のミッションの 1つは、水族館から水中ドローンを持ち込んで、“たぎり”とハオリムシの発見と採集です。
きょうは調査 4日目、半袖では少し肌寒い朝です。硫黄島港の中は日差しも明るく、風も程よくとても気持ちの良い朝です。甲板の上でつい体操をしてしまうほどに気持ちが良いです。
調査海域まで来ると、昨日に比べて幾分風と流れが弱ってきたようすでしたので、豊潮丸のキャプテンと相談をして、昭和硫黄島の沖200m付近の潜航な可能な場所を選んで、熱水サイトの調査にチャレンジしました。
ちなみに、昨日(10月16日)の水中ドローン調査は・・・
昨日は、風と流れが強く目的の場所にたどり着くことができませんでした。あまりに風が強いので、薩摩硫黄島の影で風の少ない場所の水深80m付近で、テストを兼ねて最初の水中ドローン調査をおこないました。
水深77mでも水温はなんと27℃と暖かく、海底は薩摩硫黄島に向けて急斜面、底質は粗目の砂で、噴石でしょうか、やや大きめの火山性の岩が点在していました。
しばらく浅場に向かって進んでいくとハタタテダイの仲間やタテジマキンチャクダイ、アカモンガラなどの中型の魚を見ることができました。
薩摩硫黄島の直ぐ近くでしたが、たぎりや温泉の噴出は確認できませんでした。その後は、昭和硫黄島付近の150m付近の海底調査を試みましたが、風と流れで水中ドローンのケーブルが出きってしまい、着底とほぼ同時に離底となってしまい厳しい調査でした・・・
さて、本日ですが、結果的には残念ながら熱水サイトにはたどり着くことができませんでした。
昨日よりは海況は良かったのですが、それでもやはり、風とうねりは強く残っており、調査船が流されてしまい、多くの水中ドローンのケーブルが出て行ってしまい厳しい状態でした。それでも、最大で何とか180m付近までたどり着くことはできました。
海底は非常に暗く、水中ドローンの光でも周囲を見渡すことが難しく、砂地に着底し、ついで巨大な岩が密集する海底に変化していきました。海底は砂地でフサカサゴの仲間、徐々に点在している岩が大きく変化していきました。大きな岩にはヒドロサンゴの仲間やカイメン類が活着し、その間にはキツネダイやモエビの仲間と思われるエビの仲間を見ることができました。魚類自体は、あまり多くは見られず、海面まで上がってくると、ツノクラゲの仲間にちらほら出会うことができました。
次いで風とケーブルの長さを考慮して100m付近の海底調査をおこなうと、この場所でも水中ドローンより明らかに大きな岩の海底で、岩の直上をハタタテダイの仲間が遊泳していました。相模湾では、ちょっと考えられない感じですね。
ちなみに水温は100mでも23℃で、まだ温かいです。岩には非常に多くのムチヤギの仲間や大きなヒドロサンゴの仲間が活着し、こちらではメガネハギでしょうかモンガラカワハギの仲間が見られました。
今回は、初のチャレンジで熱水のたぎりサイトまでたどり着くことは叶いませんでしたが、大きな火山の噴火によって形成された薩摩硫黄島周辺の海底のようすを映像に収めることができました。非常に貴重な海底調査ができました。何らかの形で、みなさんにもお見せできるよう頑張りたいと思います。
また、本日の昭和硫黄島でのタイワンホウキガニの潜水調査は予定通りおこなうことができ、タイワンホウキガニの行動のようすもしっかり水中カメラで記録することもできました。
さあ、調査も折り返しです。
明日からは、ビームトロールとORIネットでの曳航調査です。どんな生物に会うことができるか今から楽しみです。
それでは、また。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。