2023年10月16日

豊潮丸 薩摩硫黄島ホウキガニ採集調査(3)
航海日誌 3日目/藤田

  • 期間:2023年10月14日(土)~10月20日(金)
  • 場所:鹿児島県三島村 薩摩硫黄島
  • 目的:薩摩硫黄島におけるホウキガニの採集調査
  • 担当:杉村・藤田


きょうからついに本格的な調査が始まりました!
初日の日誌でも書きましたが、特に重要な調査の一つ、硫黄島周辺での潜水調査です。
当初タイワンホウキガニが生息している昭和硫黄島での潜水を目指していたのですが、今朝は波が高く島に近づくことができませんでした。
2本潜る予定なので1本目は昭和硫黄島ではなく、比較的穏やかな海況だった薩摩硫黄島で潜水調査をおこないました。

潜水調査ではスキューバダイビングをするわけですが、豊潮丸から直接エントリーするのではなく、小型ボートで島に近づきそこからエントリーします。
タンクを背負って機材を持ち、ボートに乗り込んだら豊潮丸の船員さんに操縦してもらって目的のエントリーポイントまで向かいます。

薩摩硫黄島の周辺はものすごく濁っていて、一緒にエントリーしたはずのほかのダイバーの姿が一瞬で見えなくなりました。
特に中層が茶色く濁っていて、腕を伸ばした先が見えないレベルでした。
タイワンホウキガニは薩摩硫黄島では生息が確認されていないので、まずは熱水が湧き出る箇所を探します。
1時間ほど潜水していましたが、このポイントでは熱水は全く見つかりませんでした。
もちろんホウキガニの姿もありません。
この濁りの中ですが、ほかの魚の姿は少し確認できました。
岩肌にぴたっとくっつくハゼの仲間や、関東の海でも普通に見られるソラスズメダイなどです。

タテジマヘビギンポが上の方にいます。見えますか?タテジマヘビギンポが上の方にいます。見えますか?

おのおの熱水を探しましたが見つけられなかったので、一度浮上しほかのダイバーと合流します。
水中で熱水噴出域は見られませんでしたが、薩摩硫黄島の岩壁からはあつあつの温泉が流れ落ちていました。

帰りも小型ボートで迎えにきてもらいます帰りも小型ボートで迎えにきてもらいます

さて、1本目は断念した昭和硫黄島ですが、午後は少し海況がましになってきたので本日2本目は昭和硫黄島にトライしてみることになりました。
薩摩硫黄島から昭和硫黄島への移動も、豊潮丸は大きく揺れます。
ぎりぎりの海況だったようですが、なんとか昭和硫黄島に近づけそう!ということでダイブ決行です。
私は移動時間中の揺れで少し船酔いしていたので、ぎりぎりの時間まで自分のベッドで休んでいました。
機材の準備をしたら いざ、昭和硫黄島へ向かいます。

昭和硫黄島を目指すダイバーたち昭和硫黄島を目指すダイバーたち

エントリーポイントで足元を覗いてみると・・・ 出ていました!気泡です!!
早速潜行していきます。
するとあたり一面から ぶくぶくと気泡が出ていました!!

地面からたくさんの気泡が湧き出てきます地面からたくさんの気泡が湧き出てきます

この光景を見ることができて感動してしまいました。
ですがこの光景をかみ締めつつも、タイワンホウキガニを探さなければなりません。
私のミッションはホウキガニの生息環境と行動を観察、記録することです。
岩の隙間や石の下に隠れていることが多く、探してもなかなか見つけられないので潜水時間のリミットに間に合うか少し焦りました。
ホウキガニがいそうなところをしばらく探して、ようやく見つけることができました!

こちらを見ていますこちらを見ています

岩の隙間にいると見つけるのが難しいです岩の隙間にいると見つけるのが難しいです

白い もやもや はバクテリアです。
あたりは地面から熱水が出ているのでとても暖かく、水温は 27℃近くありました。
無事にホウキガニの生息している環境を観察することができ、一安心です。
数か所で目視できたのですが、岩の隙間にいることが多く、カメラでの撮影にはかなり苦戦しました。
あしたも昭和硫黄島へ潜水できる予定なので、さらに多くの生物を見たいと思います。
そして今度こそはちゃんと映像に収められるよう頑張ります。

1日の調査が終わったあと、硫黄島の秘湯、東温泉に行きました。
東温泉は岩盤から湧き出る温泉をせき止めて作られた、天然の露天風呂です。
片道 40分をかけて硫黄島港からみんなで歩いて向かいました。

東温泉東温泉

海を臨む絶景の温泉でとても気持ちよかったです。
夕方に訪れたので、沈む夕日がまた幻想的でした。
温泉で暖まったあとは船までの道を戻っていきます。
少し遠回りをして帰ったら、道中すっかり日が暮れて真っ暗になってしまいました。
ライトで照らしながら歩く自然豊かな道のりも、楽しかったです。

あしたも潜水調査の予定なので、しっかり寝て備えようと思います。
願わくばきょうよりは波が穏やかでありますように・・・。
それでは本日はこのあたりで。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

RSS