2026年05月07日

相模湾鯨類調査

  • 期間:2026年 5月 7日(木)
  • 場所:相模湾
  • 目的:相模湾に来遊する鯨類種特定に関する調査研究
  • 担当:花上、浦﨑、伊藤


今回も引き続き「でいとう丸」に乗船し、相模湾で目視調査をおこなってきました!
メンバーはお馴染み花上、浦﨑、伊藤、そして調査実習で TCA東京ECO動物海洋専門学校の先生と学生さんたちです。
今年度最初の調査、なんとしても滑り出しよくスタートしたいところです。

この日の海予報は“凪”。
6時半の出港時には、辺りはもうすっかり明るく、朝日を浴びながらのスタートとなりました。冬の調査では、まだ薄暗い時間帯に出港することも多いため、明るい海へ向かっていくこの季節ならではの景色に、調査前から気持ちが高まります。

ちなみに去年の同じ時期には、ハナゴンドウとスジイルカを発見。さらに前回の調査( 2月)でもハナゴンドウ、そしてバンドウイルカと種不明のハクジラ類を確認することができていました。そのため今回の航路は、前回と同じ時計回り。去年の同じ時期は反時計回りで調査をおこなっていたため、今回は反対側の海域も見てみることにしました。


ちょうどイカが産卵のため沿岸に集まる時期でもあるため、「きょうはハナゴンドウがいるのでは?」と、調査前から自然と気持ちが高まります。とはいえ、去年は 2回連続で発見ゼロの日もあり、「きょうはどうだろうね」と少しドキドキしながら海を見ていきました。
この日の海はなんだか雰囲気が良い。鳥も群れで飛んでいて、生き物の気配があります。近頃の調査では鳥も魚もほとんど見られなかったため、それだけでもうれしくなってきます。
「早いうちに見つかれば安心して調査できるのにねぇ」なんて話していた 7時過ぎ、突然船が停止。何かあったのかと思っていると、船長から「いた!」との声が上がりました。
急いで周囲を探すと、そこにはハナゴンドウの群れ! 4頭を確認することができました。
しかも群れはかなり活発で、何度も水面を飛び跳ね、ブリーチングジャンプまで披露。朝の静かな海に大きな水しぶきが上がります。

写真撮影をしながら、今回は新兵器も投入。5mほど伸びる長い棒の先に360度カメラを取り付け、映像撮影もおこなっていきます。

ちなみに棒を持っているのは花上トリーターです。

今年度最初の調査で発見ゼロにならずに済み、一安心。
さらに前回とかなり近い場所でハナゴンドウを発見できたため、「もしかしたらこの辺りはハナゴンドウが出やすいポイントなのでは?」なんて話も出てきました。
気持ちも軽くなり、「よし、次へ行こう!」となったところで――
伊藤、離脱です。
実はこの日、「凪予報だから大丈夫だろう!」と酔い止めを飲まずに乗船していました。完全なる判断ミス……。
少しの間、一人で遠くを見ながら吐き気と戦うことに。不甲斐ないです……。

それでも目視調査は続けます。
ちなみに伊藤がダウンしている間には鯨類は現れず。そこだけは少し安心でした。
そして 9時頃。

大島へ近づくにつれ、だんだん空模様が怪しくなってきました。霧も濃くなり、今にも雨が降りそうな空。少し肌寒くなってきます。
霧が濃いと、見えるはずの鯨類も見えなくなってしまうため、ここで航路変更。伊豆半島の岸寄りへ向かうことになりました。
その移動中・・・
「何か浮いてる!」という声が上がります。ちょうど深度が800~1,000mと深い海域だったこともあり、「もしかしてコマッコウでは……!?」と一気に緊張感が走ります。
ですが、船を近づける間に影はスッと消えてしまいました。本当にコマッコウだったのかは分かりません。でも、この海域なら十分可能性はあります。
時間にも余裕があったため、「15分ほど待ってみよう」ということになりました。
コマッコウは、浮上時にブローがほとんど見えず、潜る時もマッコウクジラのように尾びれを高く上げません。静かに潜っていくため、とにかく見つけるのが難しいそうです。
それでも粘って探しましたが――15分後、再発見はできず。
後ろ髪を引かれながら、その場を後にしました。

「残念だったねぇ」なんて話しながら調査を続けて11時頃。
「ひれだ!」との声が上がりました。発見者によると、「今回は絶対にひれだった! 5頭くらいいた!」とのこと。実際に何人かが海面に出たひれを確認できており、これはなんとしても種判別まで持っていきたいところです。
すぐに船で追跡を開始。ひれが見えた方向へ向かいながら探していきますが、イルカたちは猛スピードで沖へ。海面に一瞬姿を見せたかと思えば、すぐに消えてしまいます。
何度か見失いながらも粘って探しましたが、結局しっかりとした姿を確認することはできず、種判別までは至りませんでした。
記録としては、「種不明小型鯨類」。
イルカがいたのは間違いない。それだけに、確認しきれなかった悔しさの残る発見となりました。
……そして蛇足ですが、ここで伊藤、2回目の離脱。
本当に不甲斐なすぎる。

そして復活した13時頃。
前回、100頭ほどのバンドウイルカの群れに遭遇した辺りへ差しかかっていました。
近頃の調査ではあまり見られなかったトビウオの姿も確認。魚がいる、ということは、それを食べに鯨類もいるはず……! みんなで期待しながら探していると、またもや「ひれ!」との声が上がりました。
しかも小さい! 「これはバンドウイルカでは!?」と全員で目を凝らします。
そして現れたのは――ハナゴンドウでした。
うれしいですよ!?
うれしいんですが、「ハナゴンドウかい!」と思わずつっこみ。
こちらも 4頭の群れでした。

朝に出会った群れかとも思いましたが、写真で個体識別をしてみると別個体のよう。
朝の群れとは違い、こちらは比較的ゆっくり泳いでいました。時折お腹を水面に打ち付けて水しぶきを上げながら、のんびり進んでいきます。

そのおかげで写真もたくさん撮影することができました。

もちろん360度カメラでも撮影!
最初の20分ほどは種判別用の写真や映像を撮影し、残りの10分ほどは個体識別用に、できるだけ全個体が分かるよう撮影をおこないました。

そして再び航路へ。
いや、これはかなりの大収穫なのではないでしょうか!
……そんなるんるん気分の中、またしても伊藤は 3回目の離脱。
周りのみなさんも慣れたように見送ってくれました。お恥ずかしい限りです。

その後も 1時間ほど調査を続けましたが、タイムリミットが近づいてきたため、船は帰路に向かうことになりました。スピードを上げて片瀬漁港へ向かいます。
タイムリミットとはいえ、ハナゴンドウを 2群も発見することができて、船内もどこかほくほくした空気です。欲を言えば、去年見られたスジイルカにも会えたら最高だったのですが――

そんな話をしていた、その時。
猛スピードで江の島へ向かう船の横で、水しぶきが上がりました。
みんなの脳裏をよぎる、前回の“マグロ事件”。
前回、水しぶきを見て「絶対イルカだ!」と大盛り上がりした結果、正体はピョンピョン跳ねるマグロだった、という出来事がありました。

今回も、船を止めるべきかどうか全員迷います。
どんどん遠ざかっていく水しぶき。
どっちなんだ… 時間も無いから魚だったら停まらないぞ… と見ていると――

ピョーン!

跳ねた姿が、はっきり見えました。めちゃくちゃイルカ!!
全員大慌てで船長へ報告します。急いで追いかけ、確認できたその正体は、なんと「スジイルカ」!
こんな漫画みたいにきれいな展開、本当にあるんだ…… と思うほど完璧なタイミングでした。
ただ、問題はここから… とにかく動きが速い!
スジイルカたちは泳ぐというより飛び続けているレベルでブリーチングジャンプを繰り返していました。
見ている分には最高。でも写真が撮れない!
なんでもいいから、とにかくスジイルカだと分かる写真を! と、全員で連写しまくります。

さらに360度カメラも出動。今までは花上トリーターへ棒を渡していたのですが、写真に専念してもらうため、今回は伊藤が棒を持って船首へ……しかし、既に伊藤は 3回ダウン済み。
ふらふらになりながら船首へ向かい、必死に撮影を続けます。5mほど伸ばした棒は風に煽られ、腕はぷるぷる。気持ち悪さもどんどん加速。
最終的には10頭ほどいた群れを見失ってしまいましたが――ぎりぎり、目の横の“スジ”が分かる写真の撮影に成功!

そして、ここでふと思い出します。
午前中に見つけた、種不明小型鯨類。あの群れ、今回のスジイルカに少し似ていなかったか……? 真相は分かりません。でも、スジイルカだったらうれしいかぎりです。

スジイルカ後に完全撃沈した伊藤を乗せ、船は15時半過ぎに片瀬漁港へ到着。
これにて今回の目視調査は終了となりました!
1日の調査の中で、ここまで良いペースで鯨類を発見できたのは本当にうれしかったです。

ハナゴンドウに始まり、最後はスジイルカ。
しかも種不明の小型鯨類まで含めると、1日を通してずっと海に期待感がありました。
今年度最初の調査としては、とても良いスタートになったのではないでしょうか!

……そして伊藤は次回から、絶対に酔い止めを飲もうと思います。


本事業は、船の科学館「海の学びミュージアムサポート」の支援を受けて実施しています。

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