様々な機関との連携による深海調査研究と教育普及への取り組み

2013年11月
第58回 水族館技術者研究会 話題提供 (日本動物園水族館協会)
根本 卓 ・ 藤岡 換太郎 ・ 野田 智佳代 ・ 三森 亮介 ・ 堀田 桃子 ・ 平田 大二 ・ 大島 光春 ・ 森 慎一 ・ 柴田 健一郎 ・ 高橋 直樹 ・ 満澤 巨彦 ・ 西川 徹 ・ 大橋 みさき



様々な機関との連携による深海調査研究と教育普及への取り組み

根本 卓(1) ・ 藤岡 換太郎(2) ・ 野田 智佳代(3) ・ 三森 亮介(4) ・ 堀田 桃子(4) ・ 平田 大二(5) ・ 大島 光春(5) ・ 森 慎一(6) ・ 柴田 健一郎(7) ・ 高橋 直樹(8) ・ 満澤 巨彦(9) ・ 西川 徹(9) ・ 大橋 みさき(9)
 (1) 新江ノ島水族館
 (2) 神奈川大学
 (3) 京急油壺マリンパーク
 (4) 葛西臨海水族園
 (5) 神奈川県立生命の星・地球博物館
 (6) 平塚市博物館
 (7) 横須賀市自然・人文博物館
 (8) 千葉県立中央博物館
 (9) 海洋研究開発機構

[要旨] 深海の調査研究は大学や研究機関が主体であり,成果発表は学会や論文など限られている.その成果の大衆化を担う機関として博物館や水族館が期待されるが,企画展など一時的な展示が多く,本領を発揮できていない.そこでより効果的な方法として「アウトリーチを目的とした研究航海」が独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)で計画された.これに博物館4館と水族館4園館が参加し「KO-OHO-O の会」が組織された.「分野を越え,各機関の特色を生かし,地質学と生物学の両視点のもと展示を考慮し調査を行う」という,かつてない斬新な発想のもと,2008年より活動している.
調査海域には世界的にも複雑な海底地形と多様な生物が存在する相模湾を選択した.2008年,2010年,2012年と3回の調査を行い,相模湾西部(初島沖:水深1170-500m),南部(熱川沖:1007-993m),北部(小田原沖:600-800m),東部(相模海丘:1000-500m)及び三浦海底谷,東京海底谷,野島海底谷の7海域で相模湾の地質学的特徴と生物分布の関係性を探るべく潜航調査を行った.
その結果,相模湾各所の地質や生物の分布の把握,相模湾では発見例の少ないオオグチボヤなどの記録,ゴミ等の人の影響の把握など相模湾の深海特有の知見が得られた.それらを用い,鯨瞰図(3 次元海底地形図)バイオジオトラバース(生物地質断面図)などの展示物の作成,採集した岩石や生物の標本化,映像を用いた番組の作成,写真を加工した「相模湾八景」「『深海の四季』屏風」の作成など,視覚効果の高い手法を用い,各機関での展示解説,サイエンスカフェでの講話や小話を積極的に行っている.今後は深海を持つ駿河湾や富山湾へ調査範囲を広げその比較を行いたい.
深海は水族館にとってフロンティアであり注目すべきである.他館や他分野と連携し教育普及に主眼に置いた本活動を,今後の水族館の新たな可能性を引きだす一つの取り組みとして提案したい.

RSS