地元が近かったこともあり、幼い頃から「水族館へ行く=えのすいへ行く」というくらい、一番身近な水族館でした。祖父が大の釣り好きで、えのすいへ来ると「この魚はうまいんだぞー」と大きな声で言うので、少し恥ずかしい思いをしたこともありましたが、それもいい思い出です。20年というと人生の大半を占めますが、えのすいで過ごした日の記憶は色濃く残っています。きっと多くの人にとって、えのすいで過ごした時間は大切なものだと思います。そのようなすてきな場所で働くことができていることに、まずは感謝したいです。
さて本題ですが、どの生き物に感謝しようかここ数日悩んでいました。できればたくさんの生き物に感謝したいのですが、とても書ききれないので、代表してミノクラゲに感謝していきます。
昨年10月に、北里大学のマレーシアでの食用クラゲ調査に同行させていただきました。えのすいでは、タイやフィリピンの調査に参加してきましたが、マレーシアでの調査は今回が初めてでした。どんなクラゲと出会えるか未知数なところもあったので、2個体の大きなミノクラゲと出会った時は、その迫力に驚くと同時に少しだけホッとしました。
しかし、大きすぎるので輸送は不可能なのではないかという意見もあり、初めはプラヌラの採取に留めるという方針でした。でも、みなさんにえのすいでこのクラゲの生きている姿を見ていただきたいという思いがふつふつと沸きあがり、どうにか輸送できないか考えてみることになりました。
そして、現場でのクラゲのキープに始まり、大きな発泡スチロールの確保、現地での酸素パッキング、現地の業者による細やかなクラゲのケアと輸送手続き、数日間に及ぶ輸送などミノクラゲの展示に至るまでには、たくさんのプロセスを踏んでいます。予定通りにいかないこともあり不安な気持ちもありましたが、今もなお展示を続けることができています。
そこまでには北里大学の三宅先生と学生さん、調査のコーディネートをしてくださったマレーシア科学大学臨海実験所(CEMACS)の職員のみなさま、マレー語や中国語などで現地の方とコミュニケーションをとってくださったシンガポールの水族館の方、現地の生体販売業者のみなさま、受け入れ準備をしてえのすいで待っていたクラゲチームの先輩方をはじめ、本当にたくさんの方のサポートがありました。
私は、展示を通してえのすいに来てくださるみなさんにこのクラゲのおもしろさ、美しさを伝えるとともに、飼育を通してミノクラゲの生態を解き明かすことで、協力してくださったみなさまとミノクラゲへ恩返しをしていきたいと考えています。
20周年という節目の年に、貴重なクラゲの展示に携わることができて本当に良かったです。
今後も、みなさんにワクワクすることや新たな発見を伝えていけるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします!