2025年03月08日
トリーター:松田

足湯、やってます

みなさんこんにちは! 新人獣医師の松田です。
…もう一度言わせてください。「新人」獣医師の松田です!
早いもので、私が入社してから1年が経とうとしています。新人ヅラももうしていられません。改めて気を引き締めなければという思いを持ちつつ、新人時代最後のトリーター日誌をお送りします。

さて、3月には入りましたが、最近は雪が降ったりしてまだまだ寒いですね。ということで今回はタイトルの通り、足湯のお話です。
「あれ、えのすいに足湯なんてあったっけ?」と思った方はその通り。えのすいの足湯はホモサピエンスのみなさんのご利用はお断りの、ペンギン専用の足湯です。

足湯に入っている「サニー」(奥)と「ハク」(手前)足湯に入っている「サニー」(奥)と「ハク」(手前)

この足湯ですが、ただ気持ちいいからという理由で行なっているわけではなく、れっきとした治療の一部として行なっています。
ペンギンで発生しやすい疾病の一つに、「趾瘤症(しりゅうしょう)」というものがあります。
趾瘤症の原因には、体重のかかり方のバランスが悪くなって足の裏の血液のめぐりが悪くなることや、足の裏にできた小さな傷から細菌が感染することなどがあります。
えのすいにも趾瘤症になってしまったペンギンがいるのですが、このペンギンたちに、「血液のめぐりが悪くなること」に対する治療として、足湯、もとい「温浴」を現在実施しています。
お風呂として気持ちいいくらいの温度にしたお湯を、人工芝(これも表面の凹凸で足の裏にかかる体重を分散させています)を敷いたバットに張って、しばらくペンギンに入ってもらいます。
「サニー」は足の関節が悪いこともあり、写真のような木枠に入って立つための筋力をつけるリハビリも行なっているので、木枠ごと温浴をしています。「ハク」は普通に動けるのですが、足湯に入ってしまえば特に嫌がることもなく入っていてくれます。
温浴が終わった後には、「細菌の感染」に対して、患部の消毒と抗菌薬入りの軟膏を塗っています。

温浴の効果はどれほどか、が気になるところですが、上が「サニー」の左足裏の比較写真です。左が温浴開始前で、皮膚が黄色くなっているところが趾瘤症になっているところです。そして右が温浴開始5週間後の写真。黄色い部分がなくなりました! 写真にはありませんが、右足もかなり良くなっています。過去に温浴をやっていなかったときと比べて早い回復になったので、温浴の効果は少なくともあったのではないかと思っています。
「ハク」は温浴を始めたばかりなので経過観察中ですが、「サニー」と同じようにうまく治ってくれることを期待しています。

実はこの温浴治療、学生時代の水族館実習で聞いた話を実行してみようと思って始めたものでした。このように過去の経験が活きたのはうれしいなと思うと同時に、今までやっていなかった治療に協力してくれるトリーターやペンギンにも感謝したいです。
生き物の治療は今回のようにうまくいくことばかりではないかもしれませんが、2年目になってからも獣医師としての仕事に邁進していきます。

ペンギン・アザラシ

RSS