2011年08月10日
トリーター:根本

頭寒腹熱オハラエビ極楽温泉システムの真価はいかに!?その 1


前回のオハラエビのお話を読んでくれた方、ありがとうございます。
きょうは先日の当直日にやった実験のお話しの続きです。

オハラエビ・・・
知っている方はどれくらいいらっしゃいますかね?
深海の“化学合成生態系”に興味のある方なら知ってらっしゃるのかな?
化学合成生態系の住人では、ユノハナガニやハオリムシはメジャーになってきていると思いますが、このオハラエビはどうなのでしょう?
おそらく飼育・展示しているのは“えのすい”くらいでしょうし、さらに大きな水槽に入って目立たないので知名度は低いのかな?
でもいつかは「大オハラエビ展!!」みたいのをやってビシバシ宣伝して、水槽を見ている小さい子から、
「あ!オハラエビだ!」
という声が聞こえるようにしたいです。

さてさて、このオハラエビの仲間たちですが、化学合成生態系の中の「熱水噴出域」と「湧水域」の両方に棲んでいます。
ただ「湧水域」に棲んでいる種類は少なく、多くは熱水域在住です。
ちなみに“えのすい”から一番近いオハラエビの生息地は、目の前の相模湾の海底の湧水域なんです。
シロウリガイやハオリムシの群集の間でチョロチョロ歩いたり、ピロピロ泳いだりしてオハラエビ(Alvinocaris longirostris)は暮らしています。
この種は熱水域にも棲んでいる珍しい種類でもあり、分布はとても広く、相模湾の湧水域と、沖縄やパプアニュギニアの熱水域に棲んでいます。
深海の熱水や湧水が湧いているようなピンポイントな場所にしか棲まない小さなエビがどうやって分布を広げたのでしょう?
幼生が流れに乗って分散して行くのだと思うんですが、最後はどうやって熱水や湧水がある場所にたどり着くのか?
そもそもなぜそんな特殊な場所にしか棲んでいないのか?
飼育してみると、水族館の普通の餌(オキアミやアサリ、イカ、マグロなど)を食べるし、大学院のときに研究用に飼育していたトウロウオハラエビ(Opaepele loihi)なんかは熱帯魚のプレコの餌をモリモリ食べていました。
おまけに熱水や湧水から出る硫化水素が無くてもヘッチャラのようです。

こうなると深海の化学合成生態系で棲む理由は豊富な餌か熱水の熱しか考えられません。
湧水もほんのわずか暖かいようですし。
ということで、それを確かめるべく作ったのが「頭寒腹熱オハラエビ極楽温泉システム」です。
特に卵がキーポイントなのでは?と思っています。
温めたると発生が進むことはユノハナガニなどで知られています。
オハラエビはどうか!?
抱卵しているオハラエビを集めて行動観察実験です!
おっと、すっかり前置きが長くなってしまいましたので実験の結果はまた今度!

バックナンバー
君はいったい何エビなのかい?
熱水とエビ
オハラエビ

トウロウオハラエビ (C)JAMSTECトウロウオハラエビ (C)JAMSTECオハラエビ (C)JAMSTECオハラエビ (C)JAMSTEC

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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