2011年10月20日
トリーター:寺沢

ギョギョッと骨展~アザラシの場合~

例えば、それを見て、骨格を組み立てたときにどこか一か所ずれなかった?とか、なんで余分な骨が 1本付いてるの?とか、考えてはいけない。
なぜなら、それはそのようなものだから。

オスにあって、メスにはない、その骨。
知っている人は知っているが、知らない人があまりにも多く、アザラシ、アシカ、セイウチやラッコなどにはあるが、イルカにはない、その骨のことまでは。

多くの哺乳類には、陰茎の中に骨がある。
イヌ、ネコ、ネズミ、ミンク、クマなどなど。
ヒトにその骨があるかないかは、書くまでもないだろう。
ちなみに、チンパンジーにはあり、1cm程度だがゴリラにもある。
陰茎中隔の前位部が骨化した棒状の骨で、イヌでは 10cmを超えるものもある。
このミナミゾウアザラシは 27cmだった。
英語ではbaculumと呼び、小さな杖の意味。
杖が折れるものであるように、陰茎骨も骨折をする。

ミナミゾウアザラシは一夫多妻制でハーレムを形成する。
複数のメスを従えて、強いオスは一繁殖期で 40頭ものメスを妊娠させることができる。
彼らの繁殖を考える上で、小さな杖が大きく貢献していることは否定できない。

骨が分かれば、その動物の生態が見えてくる。
学者によっては、陰茎骨の形で動物を分類している人もいる。

その骨のことを知ると、押忍、押忍!と自己主張するかのようにチン座しているようで、なんとも猛々しい。
骨名を、Os penisともいう。

そんな貴重な骨を拝めるのは、10月末まで。

ミナミゾウアザラシミナミゾウアザラシ

関連日誌
ギョギョッと骨展~サメの顎~
ギョギョッと骨展~キングペンギンのホネ~


◎ギョギョッと骨展~時を超えた魚たち~
 2011年10月1日(土)~2011年10月31日(月)
 → 終了いたしました
[協力]
・大阪市立自然史博物館
・日本大学生物資源科学部付属博物館

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