2019年09月30日
トリーター:足立

9ラゲの9月 (2)

あっという間に「9ラゲの9月」が終わりになってしまいました。「9ラゲの9月」の内でも盛り上げる予定だった9月9日に、台風15号がやって来て、新江ノ島水族館も午前中は休館になりました。2019年の9月9日…「9ラゲの9」が3つの日。記憶に残る日となりました。

2019年の9月は、Chrysaora(9リサオラ属)=ヤナギクラゲ属が絶好調の月でした。
「動物学ラテン語辞典」(小野展嗣/編 ぎょうせい)によると、Chrysaora…ヤナギクラゲ属(Chrysor -+aor「吊り手、武器」またはaorous「怪物Scyllaのポリプ状の肢」に由来)[刺胞動物門]とあります。・・・なんだかよくわからないですね。

そこで、「怪物Scylla」をネットで検索してみると、スキュラはギリシャ神話の登場人物で、もとは美しい女性だったが、呪いのかかった毒薬を撒かれた入り江の水に浸ってしまったため、下半身が6匹の凶暴な犬の姿に変わってしまい、そばを通る船の船員を6人ずつ襲う怪物になってしまったということなのです。
下半身の描かれ方は作品によって異なる場合があり、腹部から6匹の犬の前半身が生え、その先は魚の尾びれになっているとか、犬の足の代わりに蛸足だったり、蛇の群れの場合もあるとか、いろいろです。

Chrysaoraの由来は、たぶんこれだな、と思いました。クラゲの一生の中の浮遊期間の姿を時期の姿を意味する「メデューサ」も、髪の毛が蛇に変えられてしまった女の怪物なのですが、メデューサもスキュラも、本人には何の罪もないのに怪物に変えられてしまったという点が共通しています。もし罪があるとしたら、それは、どちらも美しすぎたことかもしれません。

新江ノ島水族館のChrysaora(9リサオラ)属のクラゲたちをぜひ見に来てください。噛みついたりしませんから。たぶん。


Chrysaora_fuscescens 華やかな群


Chrysaora_plocamia ゴージャスな口腕


Chrysaora_chinensis たなびく口腕


Chrysaora_quinquecirrha 水底にできる影もまたいとおかし。


Chrysaora_pacifica しなやかに伸びる赤い触手

[ 2019/09/01 9ラゲの9月 (1) ]

クラゲサイエンス

RSS