2020年09月25日
トリーター:西川

大切なものはきちんと管理

旧館開業時のようすと現在の“えのすい”旧館開業時のようすと現在の“えのすい”

水族館は博物館としての機能を持っています。
博物館には、標本の収集や展示、研究などのほかに管理・保存をするという業務があります。
水族館では基本的に生きている生物(博物館でいうところの標本)を管理していますが、とても珍しい生物だったり、展示として使えそうな色や形がきれいに残っているものは、水族館でも博物館と同様に標本として管理しています。

そんな貴重な標本を“えのすい”では、標本室で管理しています。
ただ、“えのすい”は旧江の島水族館を含めると開業してから66年目になります。
これだけの歴史がある“えのすい”は、やはり標本の数もすごいです。
標本室の棚は魚類、爬虫類、鳥類、哺乳類などさまざまな標本でぎっしり。
以前のトリーター日誌でも紹介した、深海 ll の生物標本を展示するときにも、これは一度整理せねば!と思っていましたがなかなか手を付けられず、、、
今回はそんな標本室を整理し始めたので、ちょっとだけお話をします。


整理を始める前の標本室は 標本で溢れかえっており、天井すれすれまで積み上げられ、棚に収まりきらない標本が通路を塞いでしまうほどでした。
そして、いつ標本室に収蔵された標本なのかもわからないものも多かったです、、、
実は標本は、標本となる生物が存在しているだけでは価値はないのとほぼ同じです。標本に関する情報がないと、価値が低くなってしまうんです。
展示として使うのには、見た目がきれいで生物の種類が分かればよいのですが、研究等に使う目的で保存した標本では、いつどこでどんな方法で採集されたか、標本の固定方法(どのような方法で標本を腐らせないようにしているか)、飼育していた期間などのさまざまな情報が大切になってきます。
しかし、標本室の中には、情報がすでに消えてしまっていたり、もともと情報を記載していないなど大切なはずの標本がきちんと管理されていないことがわかったのです。
そのため今回の整理では、まず過去の標本を必要な情報があるものとないものに分け、情報がないものから廃棄していくことにして進めていきました。
カビが生えてしまっていたものもありましたが、手に取ったすべての標本を拭きながら進め、必要がないと決まった標本は廃棄していきます。
今回の作業で大変だったポイントのひとつが、標本を腐らなくするための固定液の処理です。
この固定液は濃いエタノールやホルマリンといった人間の体に有害な液体を使用していますので、その臭いもかなりのものです。大変でした、、、
もう二度とこの作業をしなくてよいように、きちんと管理をしていこうと心に決めました。
やはり標本は標本番号を振り分けるなど、何の標本なのか分かるようにしなければいけませんね。
標本はきちんと管理して、常に自分以外の人でもすぐに利用ができるような状態にしておくべきであって、自分にしかわからない情報の記入方法や収蔵場所は管理の仕方に問題があります。
片付けるときのほんの少しの労力で、後の管理のしやすさが変わってきますので気を付けていきたいものですね。
このようにして標本室は少しずつ片付いてきていますが、まだ標本的な価値がないものを廃棄しただけです。これから残った標本には番号を振っていきます。気合を入れて!

関連日誌
2020/06/05 深海ll 生物標本を更新しました!
2020/05/29 開館に向けて、新たな展示も!!

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