2021年04月29日
トリーター:笠川

ラストライダー

とうとう、3月24日ふ化分のジェリーフィッシュライダー、最後の1個体です。
この個体はずっとバックヤードにいた個体で、誰よりも早く脱皮をしていったエースです。
裏の水槽ではかけ流しが可能で、他の水槽ともつながっていないので、展示水槽よりは安定しています。ただ、展示してなんぼなんで、ラストライダー、出しました。もうすぐ4回目の脱皮を控えています。頑張れ!!

今までふ化した個体でここまで脱皮を無事繰り返し、大きくなったのは初めてです。だいたい、ふ化して最初の何日かで初期減耗、次の脱皮でまた減り、次でまた減りと・・・3回目まで辿り着くかどうかでした。やり方が良かったのか、運なのかはわかりませんが、素直に嬉しいです。

ちょっと内輪の話ですが、前回の3回目の脱皮をした日のことです。いつもお世話になっている広報チームのYさんがクラゲサイエンスの前を通りかかったので声をかけました。
K : 今日、脱皮したんですよ!
Y : でかっ!
普段あまり声の大きくないYさんのお腹の底から出たテンションの高い一声でした。私はこの一言が嬉しかったです。普通の人から見たら、えっ!どこにいるの?って感じの大きさです。体全部入れても 1cmくらいです。それをでかっ!といってくれた。
成長を共に見届けてくれている証拠だなと感じました。私も脱皮した個体を見たとき、でかっ!と声が出ました。
ジェリーフィッシュライダーもそうですが、クラゲを撮影するのは本当に大変です。小さいし、透明だし、動くし、逆に水流がないと沈むし。被写体をとらえるのは本当に根気のいる大変な作業だと思います。
広報チームのみなさん、いつも頼りにしています。

話をジェリーフィッシュライダーに戻します。私がなぜジェリーフィッシュライダーの展示をしたいと思ったか。
素直にこの姿、生態が面白いと思ったのもあるのですが、クラゲとの関わり合いのある生き物をクラゲと一緒に展示したいという強い思いがありました。

館内でクラゲを見ているお客さんが何の気なしに話している会話で、「クラゲって何のために生きているんだろうね。いる意味あるのかね。」みたいな会話を聞くことが何回かありました。
私たち人間もそうですが、この地球上に生きる生き物たちはどこかしらでみんな繋がっています。クラゲにもちゃんと役割があります。いろいろ説明し始めたら長くなってしまうので、どんな人でもわかりやすい形で展示をしよう、関係性がわかりやすいのは一緒に展示することだと思いました。
ただ、クラゲと一緒というのは、いろいろ大変です。バランスが崩れるとどちらかがダメになります。

あまり知識がなかった、2014年の野外で採集した個体を輸送したときの話です。
クラゲと一緒のほうがいいのかと思い、分けずにパッキングしてしまったら、ライダーはクラゲの粘液にやられ死んでしまいました。
エビクラゲについているクラゲモエビも、そうです。魚を同じ水槽でと思っても、水流の関係や水槽の大きさで、クラゲの毒にやられます。難しいです。
それでも、クラゲのいろいろな姿をみなさんに知ってもらえるように、挑戦はしていきたいと思います。クラゲって面白いと興味をもってもらえるだけで私は嬉しいです。

ラストライダーの登場ということで、文章が長くなってしまいました。でも、実は、バックヤードに4月19日にふ化してまだ1回も脱皮が終わっていないジェリーフィッシュライダーはいますので、ラストライダーがどうなるかはわかりませんが、展示は続けていけそうな予定です。
でも、頑張れ、ラストライダー!!

[ 2021/04/23 ガラスの馬車に乗って、再登場!? ]

クラゲサイエンス

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