2021年05月15日
トリーター:櫻井

うつぼの視点、えびの視点

ご覧の写真は、1階“太平洋”のトロピカル水槽に暮らすドクウツボとアカシマシラヒゲエビです。
仲が良さそうですよね! 見ていてとても微笑ましいです。いつ見ても、だいたいこんな感じでイチャイチャしています。
なんでも食べちゃいそうな大きなウツボですが、えびくんは大丈夫でしょうか。

うつぼくんからは、えびくんが、美味しそうに見えていないのでしょうか。
えびくんからは、うつぼくんが、恐ろしそうに見えていないのでしょうか。

弱肉強食の厳しい自然界では、私たちの思い通りにはなりません。私たちが見ていて仲が良さそうに見えていても、当の本人たちにその気があるとは限りません。パクっといかれちゃうなんてことは…?
ひとまずご安心ください。このうつぼくんとえびくんは互いに信頼し合っているのでパクっといかれちゃうようなかわいそうなことは無さそうです。口の中をお掃除してもらっているうつぼくんの気持ちよさそうな顔をご覧ください。


アカシマシラヒゲエビとドクウツボの関係はお互いにとって利益が得られる相利共生といい、一方のみが利益を得る片利共生や、一方が害を被る寄生などと比べると、理想的な共生の形といえそうです。
これは一般的に知られている自然界での現象ですが、あくまで人間の視点であることを忘れてはなりません。生物たちは、ただただ、生きています。生物たちの生きざまを見て、それを人間に当てはめて決めつける行為は偏った思想を産み出す危険性があり、注意が必要です。
前述した「仲がよさそう」、「イチャイチャしている」、「信頼し合っている」、「かわいそう」、「気持ちよさそう」、「利益を得る」、「害を被る」、これら全て人間の視点です。
読んでいてこの辺の表現に違和感を感じられたのであれば、普段から人間以外の生物を人間の物差しで測っていないのかも知れませんね。

理屈っぽい話ですが、人間以外の生物と向き合う際にとても重要なことだと思うのです。
とはいえ、それはそれ。この姿が微笑ましいという事実は曲げられません。

太平洋

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