2021年05月16日
トリーター:石川

境川のペンギン

フンボルトペンギンフンボルトペンギン

このところ「川にペンギンが!」という通報が続いてありました。
きっと“えのすい”のペンギンが逃げたのでは?なんて思われても嫌なので・・・ペンギン似の鳥を紹介しましょうね。

ちなみに今回はどちらも「ウ」でした。
「カワウ」 or 「ウミウ」とみられますが、「カワウ」の方が圧倒的に多いので「カワウ」ではないかなと思っています。
また、この時期間違えやすい理由に、幼鳥(ようちょう)の存在があります。
成鳥(せいちょう)になると全身が黒っぽくなるので、ペンギンとは間違えにくいと思うのですが、「カワウ」の幼鳥は淡い茶色で腹部は特に白っぽいイメージです。成鳥よりもやや小さく、陸で立って休んでいると遠目にはペンギンに見えなくもないのです。
成鳥は全長 80~100cmほどで、当館で飼育している「フンボルトペンギン」が 70cmほどですから成鳥は「フンボルトペンギン」より大きいイメージです。
ちなみに全長は、くちばしを伸ばした状態でくちばしの先端から尾羽の先までの長さです。
「ウ」は飛べるので、ある程度近寄ると警戒して飛んでいきます。
またペンギンのように翼では泳ぎません。足を使って泳ぐところもペンギンとは違うところです。

他に似ている野鳥としては、海上で休んでいる姿が見られれば「ウミスズメ」の可能性があるかもしれません。
ただし海上で見るがゆえに大きさがわかりにくいのですが、全長 25cmととても小さくかわいらしい鳥です。
“えのすい”の前の海にも多く生息しているはずで、船に乗る機会がある人はよく出会う鳥なのですが、陸にいるとほとんど会う機会がない鳥です。
陸からも双眼鏡などで海上を飛ぶ姿は見られると思いますが、どんな色、形態なのかを確認できるほど近寄れないのが歯がゆい鳥でもあります。
逆に上陸していて近寄って見られるようなら、体調が悪いかもしれません。
営巣(えいそう)場所は離島や人が近寄れないような岸壁なので、そういった場所の近くで見かけたら、静かに見守ってあげてください。近くに巣があるかもしれません。
“えのすい”でもこの 35年で 1度しか保護したことがないくらい、陸で出会うことは少ないと思います。

同じような鳥に、もっとペンギンに似ている鳥がいます。
先ほど紹介した「ウミスズメ」を聞いてからだと、「人間はなかなか安易に名前を付けるのね」、と思われてしまうかもしれませんが、それは「ウミガラス」です。
ちなみに「ウミバト」、「ウミツバメ」なんていう鳥もいます。
そういえば魚にも「ウミスズメ」っていますよね・・・!


ウミスズメ

さて「ウミガラス」は絶滅危惧種に指定されていて、国内での野生個体数は 50羽ほどといわれています。
1960年代には 8,000羽ほど生息していたようです。
かつて絶滅した「トキ」が人工繁殖と環境保全の努力で、放鳥個体と野生下で繁殖した個体を含めて、近年 450羽ほどが国内に生息しているということですが、それでもお目にかかるのはなかなか難しいです。
それを考えると、「ウミガラス」はほとんど見られない鳥と思って間違いなさそうです。
見た目はペンギンにとてもよく似ています。「ウミスズメ」より大きく、全長 40cmほどです。
今回の通報で実はこの鳥では?!とちょっとだけ期待したところもありました。
ちなみに「オオウミガラス」という同じ種の中で、一番大きな種が、かつて北大西洋のヨーロッパ沿岸に生息していました。
何を隠そうペンギンが発見される以前は、この鳥のことをペンギンと呼んでいたのです!
大航海時代、ヨーロッパの人がアフリカの南端や南米の沿岸で出会ったペンギンを「オオウミガラス」に似ている・・・「ペンギンに似ている鳥がいる!」としてペンギンと呼び、「オオウミガラス」はその後、人の乱獲で絶滅してしまい、偽りのペンギンがペンギンと呼ばれるようになったということのようです。
「ウミガラス」が似ていて当然といえば当然なのでしょう。なんせ本家本元ですからね。

ぜひみなさんもペンギン似の鳥を探してみてください。
今まで知らなかった鳥の存在に気づいたり、新しい発見が見つかると思いますよ。

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