みなさんこんにちは!八巻です。
ついに始まりました。山本トリーターの呼びかけで始まった今回の“攻め”のテーマ水槽。
各トリーターがイチオシの生き物への愛を伝える展示です。
私は「ダンゴムシすごいぜ!」というキャッチコピーのもと、ダンゴムシについて語りつくしたいと思います。
でも最初に白状してしまうと、私はダンゴムシの専門家でもないですし、ダンゴムシが好きで好きでたまらないというようなダンゴムシマニアなわけでもありません・・・
でも、私は常日頃からダンゴムシすごいなぁと思っています。
◆ダンゴムシすごいぜ! 1 「丸くなることに特化し過ぎたその体」
まずはその「計算しつくされたからだのつくり」、丸くなることに特化し過ぎたその体です。みなさんも冷静に観察しなおしてみてください。あまりにうまく丸くなりすぎていて、不自然さを感じませんか?!
確かに丸くなる生き物は他にもいます。
例えばアルマジロ。見事に丸くなります。
体の弱い部分を守るためにお腹側を隠すという意味において、全く異なる動物群にも関わらず、同じように丸くなることに特化した体を獲得したという事実もまた興味深いです。
結果から見れば、丸くなることは最善の防御戦略として、背と腹のある生き物において必然的な行きつく先で、収斂の結果なのかもしれません。私たちも身をすくめる時はお腹を抱えて丸くなりがちですしね。でもダンゴムシのようにまん丸になれる生き物は他にいません。
そもそもダンゴムシといえばまん丸というイメージですが、実はダンゴムシの仲間なら、何でもまん丸になれるわけではないようです。
みなさんがよく知っているダンゴムシ類は、今回メインの展示生物にもなっている「オカダンゴムシ」のはずです。
実はオカダンゴムシは、偶然にもダンゴムシ類の中でも最も真球にちかくなることができる種のようです。
他は丸まれても体の一部が出っ張ったり、殻の形が丸くなかったり、本当のまん丸な形にはならないものが多いようです。
オカダンゴムシの丸くなることに特化した体構造は、正に自然の造形美。偶然の産物とは思えません。しっかりとしまわれる脚、少しずつずれることにより完全に球形になる殻、触覚がぴったりとはまる溝、どこをどう見ても完全に丸くなるためにできているとしか思えません。
なぜここまで丸くなることに特化したからだを手に入れることができたのか、それは進化の偶然によるところで、実際何が起きたかは誰にも分かりません。
しかし、丸くなることが彼らの生存と進化にとってプラスに働いてきたことは確かです。少なくとも日本中ほとんどどこでもダンゴムシ類を見つけることができるという事実からも、それは明らかです。
まるで何か見えざる力を感じるくらいの見事な丸さに、私はいつも見とれてしまうのです。
◆ダンゴムシすごいぜ! 2 「陸に上がった等脚類」
ダンゴムシは甲殻類の一種、等脚目に分類される生物です。
名前に「ムシ」とつきますが、いわゆる「虫」、昆虫とは全く違う生き物で、どちらかといえばエビ・カニに近縁です。等脚目のほとんどは海にすんでいて、実際海で調査をしているとよく出会う分類群のひとつです。みなさんご存じダイオウグソクムシも、もちろん等脚目です。
しかし、陸に上がった等脚目は、ワラジムシ類とハマダンゴムシ類だけです。数ある等脚目の中でも、陸の環境に適応しているのはダンゴムシ類とその仲間だけなのです。すごいですよね!
陸への適応の秘訣は空気呼吸です。ダンゴムシはどこで呼吸していると思いますか?
実は口ではなく、腹肢とよばれるお腹の部分にあるひだひだで呼吸をしています。
他の等脚目の呼吸の場も腹肢ですが、エラのような働きをしていますので、空気呼吸はできません。しかし、ダンゴムシはそれができるのです。擬気管と呼ばれる肺のような器官がそれを可能にしています。
とはいっても、ダンゴムシも“元水生生物”。湿り気がない場所では生きていくことができません。ですから飼育中は湿気にとても気を遣うし、水族館で展示する生物として、あながち間違いではないのかもしれません・・・。
◆ダンゴムシすごいぜ! 3 「落ち葉から土へ」
ダンゴムシ類は土壌動物の一種で、主な餌は落ち葉です。
落ち葉をダンゴムシの飼育容器に入れておくと、どんどんなくなり、見る見るうちに「土」が出来上がっていくのです。これはダンゴムシを飼育するようになって初めて実感したことの一つで、分解者としてのダンゴムシの実力を肌で感じた瞬間です。
写真はダンゴムシの餌となる落ち葉と、「新たにできた土=ダンゴムシのうんち」です。どれがうんちか分かりますか?
中央にちらばる四角い塊が全てそうです。これを見ると、ダンゴムシはじめ土壌動物が生態系においてどれだけ重要な役割を果たしているか分かりますね。彼らがいなければ落ち葉が分解されるのにとても時間がかかってしまい、落ち葉だらけになってしまうことでしょう。やっぱりすごい!ダンゴムシ。
◆ダンゴムシすごいぜ! 4 「あこがれの青いダンゴムシ」
ダンゴムシといえば黒か茶色、ですよね。でも、青いダンゴムシがいるという話を聞いたことがあり、見てみたい!とずっと思っていました。
今回ダンゴムシのテーマ水槽をやると決めた時から、探していました。しかし、青いダンゴムシはいるところにはまとまっているけど、そういう場所以外にはいないとのこと。それもそのはず、実はイリドウイルスというウイルスに感染して青くなってしまうらしいのです。ダンゴムシは普通夜行性ですが、このウイルスに感染すると青くなって目立つようになり、昼間も歩き回るようになるとか。すると鳥などに食べられやすくなり、遠くまで飛んで行ったその鳥が糞をして、その糞を食べたダンゴムシがまた感染する、という仕組みです。
なかなか見つけられずにいた時、思いがけず櫻井トリーターから「青いダンゴムシ、うちの近くにいっぱいいるよ!」と嬉しい情報をいただきました!
さっそく教えられた場所へ行ってみると・・・いました!いました!
病気になっていると思うと少しかわいそうですが、憧れの青いダンゴムシに逢えて、私は大満足!
櫻井トリーター!ありがとうございます!
青いダンゴムシの他にも、オカダンゴムシ以外のダンゴムシを見てみたいという憧れがあります。実は神奈川県では、少なくとも 25種の陸生等脚類が見つかっているようです。本展示期間中、定期的にダンゴムシ探しの旅に出る予定です。
新たな種を見つけたら、展示したいと思っていますので、こうご期待!