2022年07月04日
トリーター:山本

生き物は芸術だ!

本日より、7~8月のテーマ水槽 自由研究~えのすいトリーターたちの「生き物すごいぜ!」~ が始まりました。どこかで聞いたことがあるこのフレーズ・・・!
今回のテーマ水槽では、みなさまにどうしてもこの生き物の魅力を伝えたい!!!そんな熱い気持ちをもった6人のトリーターが集まり、それぞれが大好きな生き物の展示を「自由」に「全力」で作りました!

私からは「オオミスジコウガイビル(Bipalium nobile)」のご紹介です。

この生き物はご存知でしょうか。え、知らない?
なら「プラナリア」はどうでしょう。理科の教科書とかで出てきた、切っても死なずに増えていくアイツです。コウガイビルの仲間は、プラナリアに近い扁平動物門に属し「陸生のプラナリア(Land Planarians)」とも言われます。「~ビル」という名前ですが、「ヒル」はミミズなどと同じ環形動物なので、また違ったグループです。にょろにょろ感が似てますけどね。「コウガイ」とは、イチョウの葉っぱのような形をした髪飾りの「笄(こうがい)」のことで、なんとも日本らしくておしゃれでかわいい和名です。

オオミスジコウガイビルは、今から約 50年前に、東京で採集された標本をもとに新種として記載されました。中国南部が原産の外来種と考えられており、第二次世界大戦以降、世界的な物資の輸送が日常化したことにより日本にやってきたようです。
1960年代末から今日にかけて、日本の各地で発見されています。そして年々増えているとか・・・。
最大で 1mほどに成長します。明るい場所が苦手なので基本的にはじめじめした森などに生息しておりますが、普通に街中でも見ることができます。
探すコツを掴めば、見たい時にいつでも見られるくらいの珍しさです。私が見ている限りでは一年中いて、特に梅雨の時期にたくさん出現します。
しかしこの生き物を見たいのなら、どちらかというと「時期」よりも、その日の「天候」が重要だと思っています。
狙うのはズバリ「午前中で雨が上がり、じめっとした夕方~夜」です。場所とその条件さえそろえば、ほぼ確実にみることができる・・・はず!
この前仕事終わりにNトリーターとクワガタを採りに行った時も林でたくさん見ることができました!
本当に普通に道にいるんです。こんな体色なので、いたらとても目立ちます。

さて、オオミスジコウガイビルの魅力といえば、なんといっても迫力のある捕食シーンでしょう。
本種の餌はミミズやナメクジ。口は意外にも体部の中間部にあります。千と○尋のカオ○シみたいです。
はじめてミミズを与えた時(※展示でお食事の動画を紹介しています)は結構衝撃的でした。

もっとゆっくりのんびり襲うのかと思ったら、意外と動きが早く、長い体を生かして蛇みたいな感じで相手を拘束し、このサイズのミミズを 30分くらいで溶かして食べてしまいました・・・。このサイズのミミズでも、跡形もなくなります。すごいぜ・・・。

ご満悦のようす。なんだか動きも活発になったような気がします。かわいいです。

そして、もう一つの魅力は美しすぎる背中の模様です。

この3本の線は、ツヤのある黄褐色の体表に途切れることなく交わることなく、等間隔を保ちながら、頭部から尾部まで伸びています。その個体がどんな体勢になっても、です。「機械的」であり「自然的」でもあるこの模様は言葉では表すことのできない美しさだと思います。

緑との相性が良く苔と一緒だととっても映えます。ということで、今回は苔と一緒に展示してみました。結構いい感じになったと自分でも思っています。

少し自分の話をすると、私とオオミスジコウガイビルの出会いは本の中でした。小学生の頃に大好きだった「へんないきもの」という本で紹介されていたのをみて、当時「本当にこんな形の生き物がいるのかな?」と半信半疑だった覚えがあります。
月日が経って大学生になり、何かの会話の中で「コウガイビルが見てみたいんだよねー」という話をしていたら、友達の一人が「普通にあそこにいるぞ」と教えてくれました(生物系の大学にはそういうのに妙に詳しい奴が一人はいます笑)。
なんと、通っていた大学に素敵なオオミスジコウガイビルスポットがあったのです!
連れて行ってもらったその場所で初めて実物を見た時、あまりの美しさに見とれてしまいました。そしてこの生き物が大好きになり、夜中にサンプル瓶と割り箸(※もちろん「捕獲用」ですよ!!)を持ってはそこへ向かい、捕まえて研究室で眺めていました。

飼育員は自分の大好きを伝える仕事。
水族ではないにしろ、いつかこの生き物を展示したいと思っていましたので、今回のテーマ水槽で一つ野望が叶いました。展示しているからには、ぜひこの生き物をみなさまに好きになっていただきたいです。
一般的に、この手のような生き物たちがどう思われるのかは、周りの反応を見ていればよーーーくわかります(※私も左下の水槽にいるマダ○キたちと距離を詰めるのにしばらくかかりました・・・笑)。でもせっかくなので、勇気を持ってじっくり見てみてほしいのです。きっと、完成された自然の美しさや生き様を感じていただける!と信じています。ほんと、生き物って芸術です。

今回のテーマ水槽では初の試みがたくさん詰まっています。ここから2か月間、みなさまからどんな反応を頂けるのか・・・とっても楽しみです!コーナー自体はそんなに大きくないですが、お見逃しのないように!

テーマ水槽

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