7月16日から始まる特別企画展「水中ドローンで探検! 江の島沖 深海の入り口」。
今回は展示水槽作成の裏側をご覧いただきましょう。
今回の特別企画展は、江の島沖大陸斜面域水深 100~ 300 mをテーマにした展示です。これまで2年間取り組んできた調査の経験を活かし、江の島沖という身近な海にまだこんなに謎に包まれた面白い海域があるんだよ!ということをみなさんにお伝えしたい!というモチベーションの元、計画したものです。
今回の特別企画展は水槽 2基、水中ドローン、パネル・動画の3つのテーマからなります。
水槽では現場海域で確認した生物、採集した生物を中心に展示し、現場のようすをできるだけ忠実に再現しました。
水中ドローンは近年急速に一般化してきている小型の無人探査機です。同じ深海Ⅱにある歴史的な潜水船「しんかい2000」との対比で、それぞれの特徴をよりよく知ることができると思います。
パネル・動画は、江の島沖大陸斜面域の生物多様性を一目で感じられるよう、これまで実際に確認した 9動物門 175種の生物を一挙公開しています。
また、斜面域と砂泥域の生物相の違いを分かりやすく表示しています。動画では、生体展示はできないような生物種や群れのようすをご覧いただけます。
今回の日誌では、展示水槽ができるまでについて、ご紹介します。私自身新たに大きな水槽を立ち上げるのは初めてのことで、とても勉強になりました。
まず作りたい!と思った水槽は、これまで何度も見てきた江の島沖大陸斜面域の“いつもの”光景です。「岩礁の急斜面」は、「必ず見かけるアズマハナダイやトラギス類」、「群れるトリノアシやテヅルモヅル」、「きれいな色のヤギ類」、そして「コトクラゲ」。
「平坦な砂泥」は、「オーストンフクロウニ」、「オキナマコ」、「群れるクモヒトデ」。
にぎやかな「急斜面」と、やや単調な「砂泥底」、その比較をしたいと思いました。
珍しい生き物を展示することよりも、知っているようで知らなかった江の島沖大陸斜面域 100~ 300mのようすをありのままに伝えたいと考えたのです。
それを実現するため、縦長の背の高い水槽と高さのない奥行きのある水槽の二つを作ることにしました。
具体的な水槽の仕様は業者の方と相談して決め、水温は現場に合わせて 16℃ほどにすることに。それに合わせてクーラーも選び、結露対策も十分に施しました。
そして縦長の水槽には「岩礁の急斜面」を再現した擬岩を設置し、岩礁の斜面を表現します。実は水族館の水槽に入っている岩のようなレイアウトのほとんど、特に大きなものは確実に「擬岩」です。
「擬岩」とは、本当の岩ではなくFRPというガラス繊維で強化されたプラスチックで作られたハリボテの岩です。
擬岩づくりは初めてでしたが、業者の方にイメージや形をお伝えして作っていただきました。模型を作ってもらったり、工場へ確認しにいったり、とても楽しい作業でした!
いよいよ水槽ができあがり。これまで魚が擬岩の裏側に行ってしまうことが多かったので、擬岩をしっかりと水槽に固定してもらい、ついに展示スペースへ設置しました。
今回は水槽のバックパネルにもこだわりました。始めて使う素材なのでどうなるか分かりませんが、光を吸収してとにかく黒くなる、というシートを入れました。今井トリーターがすごい姿になりながら、頑張って取り付けてくれました!